なぜESG投資が注目されるのか?

なぜESG投資が注目されるのか?

「ESG投資」という言葉を聞いたことがありますか? この10年ほどの間に、機関投資家などのプロが投資する企業を査定するときに、従来のように企業の財務情報だけで判断するのではなく、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の視点から、企業の理念や行動などの非財務情報を考慮するようになってきました。こうした投資の手法のことを、ESG投資と呼んでいるのです。それだけ聞くと、個人投資家には縁のない話のように感じるかも知れませんが、実はそうでもないのです。

年金基金のように大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、投資判断の際に、企業経営のサステナビリティ(持続可能性)を評価するという考え方が普及してきたことが、ESG投資の背景にあります。超長期にわたって、安定して収益を上げ続ける企業を選定するために、気候変動のような長期的なリスクマネジメントや、未来社会に適応した新しい収益機会を創出し続けられるかなどを評価するベンチマーク(指標)として、ESGの要素を考慮するようになったのです。

ESGの観点から優れている企業は将来にわたって、持続的に成長し続けられる可能性が高い企業、と考えることができます。 

国連責任投資原則(PRI)は国連が主導して2006年に提唱された機関投資家の投資原則です。そこには、投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込むことなどが明記されており、2019年3月時点で世界の2372の機関が署名しています。

日本では2015年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名したことから広がりはじめ、2019年5月末時点で75の機関が署名しています。

機関投資家の世界では、ESG投資は広く普及していると言うことができるでしょう。 

指針

ESG投資を実践するにあたり、投資先をどのように選定するのか。投資実行後は株主として、投資先企業にどのように働きかけるべきか。ESG投資に関する統計を行う国際団体GSIAの分類では7つの投資手法があるとされています。

1.ネガティブ・排他的スクリーニング
たばこ、武器、ギャンブルなど、ESGの観点で問題のある企業を投資対象から除外する手法

2.ESGインテグレーション
従来からの財務分析、企業評価に加えて、非財務情報も含めて分析する投資手法

3.企業エンゲージメント・株主行動
株主として投資先企業との対話や議決権行使などを通じて、ESGに関する案件に積極的に関わるよう企業行動に影響を与える手法

4.規範に基づくスクリーニング
ESG分野での国際的な基準を満たしていない銘柄をポートフォリオ(投資先リスト)から除外する手法 

5.ポジティブスクリーニング
同じ業界の中でESG関連の評価が最も高い企業を投資対象に組み入れ、投資比率を高める手法 

6.サステナビリティ・テーマ投資
サステナビリティ(持続可能性)に関連の深いテーマや銘柄への投資を行うこと。再生可能エネルギーやグリーンテクノロジーなどへの投資がこれに該当 

7.インパクト投資
貧困などの社会問題や環境問題を解決するために途上国の支援や自然エネルギーへの投資、地域開発プロジェクトや、小規模・零細企業に対する投資、マイクロファイナンスと呼ばれる小口融資などを行い、直接的な効果を生み出そうとすること

全世界のESG投資額は2016年の22兆8,900億ドル(US)から2018年には30兆6,830億ドルと34%増加しています。

日本におけるESG投資額は2014年70億ドル、2016年4,740億ドル、2018年2兆1,800億ドルと2014年⇒2016年は67.7倍、2016年⇒2018年は4.6倍と急拡大し、2018年においてはESG投資額が全体投資額の18.3%となっています。

つまり、ESG投資はもはや特殊なものではなく、現在の主流の投資のひとつであり、そこに非常に多くの資金が投資されているということです。 

では個人投資家にとって、ESG投資を考えるメリットはあるのでしょうか。長期にわたる安全な投資を行うのであれば、ESG投資は、持続可能性の観点から合理性があると言えるでしょう。

例えば、今後、社会的に許容されなくなる可能性がある倫理的でない事業を避けたポートフォリオを組むことで、売上低下や不買運動のようなリスクから逃れることができます。

逆に労働環境改善や男女平等の推進などの社会への貢献に熱心な企業は、今後ますますステークホルダーから選ばれる企業になるでしょう。企業統治を重視する企業なら予期せぬ不祥事で株価が暴落するリスクが小さくなります。透明性が重視されていることも、見えないリスクの回避に有効です。

また、ESG投資がメジャーになっていくことで、参加する投資家の数や投資額が大きくなり、そのことが株価にプラスに働く可能性があります。 

ただし、ESG投資が必ず安全で、株価が上がるものだということではもちろんありません。ESGは新しい視点を提供してくれるものであり、従来からの財務分析や株価指標などと合わせて、総合的に判断する上での材料になるものと考えるのが適切です。 

貢献

投資された自分のお金がどのように使われるのか、という観点から、単に収益を上げるだけでなく、環境に配慮した事業に使ってほしい、社会に貢献する事業に活用してほしいといった個人の意思を、投資によって具体化できるのも、ESG投資の有意義なところと言えます。環境破壊を起こしたり、弱者を搾取・抑圧したりするような企業を応援するよりは、社会に対して責任を果たしている企業に投資した方が、気持ちがいいでしょう。その上、資産も増えれば、もっとうれしいのではないでしょうか。 

このように、ESG投資に選ばれている企業は、個人投資家にも非常に参考になるのです。 

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの長期・超長期の運用を行う機関はESG投資を行う上で、複数のESG指数を採用しています。GPIFが採用しているESG指数は2019年2月時点で、以下の5つです。 

  1. FTSE Blossom Japan Index
  2. MSCIジャパン ESGセレクト・リーダーズ指数
  3. MSCI日本株女性活躍指数
  4. S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数
  5. S&Pグローバル大中型株カーボンエフィシエント指数(除く日本) 

そして、個人がESG投資を行うには、

ESG指数に採用されている企業の株式等へ投資する
ESG関連指数連動型ETFへ投資する 

という方法があります。 

ちなみに、東京証券取引所で取引されているESG関連指数連動型ETFは2019年7月時点で18銘柄あります。ふだんから使っている証券会社から気軽に購入できるでしょう。 

近年の大きな気候変動や企業の不祥事などのリスクが企業の存続に関わる大きな要因となり、投資判断の際に、従来の財務情報だけでは投資判断が難しくなってきました。

そうした中で環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の要素を考慮したESG投資が注目され、SDGs(国連持続可能な開発目標)とともに企業活動全体にわたる投資判断が行われるようになりました。機関投資家だけでなく個人投資家も簡単にESG投資に参加できます。今後も投資額や参加機関数、参加投資家数において増加が期待されます。 

参考:
GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)レポート
“2016 Global Sustainable Investment Review”
“2018 Global Sustainable Investment Review”
経済産業省 ESG投資とは
環境省 GPIF資料

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