『20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る』ブックレビュー

この著書の中で語られているのは「世の不条理をなくしたい」という著者の思い。
辺境から革命を起こし、本気で世界をより良くすることを自らのライフミッションとしています。
日々、「仕事とはなにか?」と考えている人にも読んでいただきたい一冊です。
『20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る』
著者:合田真 出版社:日経BP 単行本:204ページ

【どんな本?】
タイトルに「未来銀行」「電子マネー経済圏」の単語が並ぶ本著。
読み進める前は、フィンテックや暗号通貨、ブロックチェーンなどのキーワードが頻出する、先進的な金融形態で経済の仕組みの再構築を試みる話をイメージしていました。
しかし、ここに描かれていたのは戦争から人々を救った英雄の話――と言っても決して大袈裟ではないかもしれません。

合田真 :日本植物燃料株式会社代表取締役社長。1975年長崎生まれ。京都大学法学部中退。2000年に日本植物燃料株式会社を設立。アジアを主なフィールドに、植物燃料を製造・販売する事業を展開する。その後アフリカのモザンビークに拠点を拡大し、2012年に現地法人ADMを設立。同国の無電化村で、地産地消型の再生可能エネルギーおよび食糧生産を支援するとともに、農村で使えるFinTechやAgriTech事業にも取り組んでいる。(「BOOK著者紹介情報」より)

フィンテック

7P
現在の世界標準となっている金融システムのままでは、いずれ世界が破綻してしまうという危機感があります。

・本著では、元々「植物燃料の製造・販売」をする会社を設立した合田氏が、いつの間にか世界で最も貧しい国の1つとされるアフリカのモザンビークの無電化の村で、電子マネーを使った銀行を作ろうと奮闘する姿が描かれています。

モザンビーク

10P
せめて努力している人たちが、もう少し報われる世の中を作っていきたいと思ったのでした。

・合田氏には、一貫して「世の不条理をなくしたい」という強い信念があります。その信念を得たきっかけのエピソードに、ある少女との出会いがあります。そして合田氏は、貨幣価値の低い通貨の国に生まれたなど、本人の努力とは別のレベルの問題で豊かになれない不条理を生む一因として存在する、現状の金融システムに代わる新しいお金の「ものがたり」を紡ぎ始めます。

今後、50~100年を見据えた壮大な規模のストーリーです。「仕事」を後世にまで繋ぐものとして、自分という枠を大きく超えて俯瞰から捉える観点には壮観さすら感じます。

25P
世界は「現実」と「ものがたり」でできている

・「現実」は、エネルギーや食糧など、物理的にこの世に存在しているモノのこと。「ものがたり」は、宗教や思想、国家、法律などのあくまで人間が作ったルールと定義しています。「ものがたり」であれば変えることができると合田氏は主張し、お金もあくまで人間が作ったルールにすぎない「ものがたり」だとしています。誰もが人間が作ったにすぎないルールに日々、縛られて暮らしているのが現実でしょう。

日本という恵まれた国に暮らしていても理不尽さを感じる場面があるかもしれませんが、恵まれない国の人々のそれはいかほどでしょうか。人間が作ったルールが不条理を生む一方で、その不条理を解決するのも人間の知恵だとすれば、人間も捨てたものじゃないですね。

ものがたり

35P
パイが縮んでいく時代においては、新たな「現実」に合った新たな「ものがたり」、「現実」に合った富の分配ルールの再構築が必要だと思うのです。

・限られたパイの奪い合いが始まると、最終的には戦争に至る歴史があると、合田氏は危機感を募らせます。そうならないために、お金という分配ルール自体を変えようとする合田氏の発想力と突破力に驚かされます。

81P
私が思うに、これは妖精のせいじゃないかと思う。

・流れでモザンビークの農村で村づくり全般にかかわることになった合田氏が、日本のコンビニのような店舗の運営をしていた際に、現地スタッフから聞かされた言葉です。毎月、現金が足りなくなる理由を尋ねたことに対する返答だとのことですが、本人たちはいたって真剣らしいので笑うしかないでしょう。しかし、これを端緒として合田氏は、現金の代わりに電子マネーの導入に至ります。

あやつられる人形

84P
農民が気付かせてくれた銀行の可能性

・電子マネーを導入したことで予想外にも、お金を安全に保管するための手段として電子マネーを利用、いわば「貯蓄」する農民が現れました。これをきっかけに、購買データを入手可能になるなど、「未来銀行」化が加速することになります。

187P
革命は辺境から。世界をより良くするような企業を築きたい起業家は、アフリカから始めてみませんか。

・合田氏は自分の仕事について、1000年たってもなくならない「原点」を見据え、現代というキャンバスに、事業という作品を描くものにしたいと表現しています。「企業=ビジネスチャンス」という発想とは別次元の存在でしょうか。

志ある起業家

204ページというさほど多くないボリュームながら、エピソードや展開がふんだんに盛り込まれています。
タイトルに「未来銀行」とありますが、新しいお金の「ものがたり」を紡ぐことで世の不条理をなくし、争いや戦争を未然に防ぐという合田氏の視点の壮大さに触れると、「ひょっとして、この人自身が戦争を止めるために未来からやってきた未来人なのではないか?」と疑ってしまうほどです。

すでに起こった争いを止めるのではなく、争いを未然に防ぐ新しいSFヒーローの形がここにあるのかもしれません。
「働く意味」などを考えたくなったときに手に取ってみてはいかがでしょうか。

ちなみに、未来思考と言えばこんな記事もおすすめです。
『なぜESG投資が注目されるのか?』

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