IPOとは? そしてIPO株投資とは?

文: みんなのマネープラン編集部  監修:大間 武(ファイナンシャルプランナー) 

人気のスマホアプリを開発しているベンチャー企業がまもなく「IPO」するらしい。幅広く事業を展開してきた企業グループが持株会社を作って「上場」するらしい。そんな話題を耳にしたことがある人は多いでしょう。

そして、そんな企業のIPO株で大きく儲かることがあると聞いたことがある人もいるかも知れません。でも、そもそもIPOとは、具体的にどういうことなのかご存知でしょうか。また、IPO株を手に入れると、なぜ儲かることがあるのでしょうか。以下では、IPOとIPO株投資の基本についてご紹介して行きます。

IPOとは

IPOとはInitial Public Offeringの略。日本語では、株式公開という言葉を使っています。その意味は、株式会社が自分の会社の株を証券取引所で売買できるようにすること。違う表現をすると、株式市場に上場することです。「IPOする」「株式公開する」「上場する」はいずれも同じような場面で使われています。

株式会社は株を発行して資金を調達しますが、ほとんどの会社では自社の株を持っているのは社長や役員、関係会社など、ごく一部の人たちや組織に限られます。しかし、世の中のさまざまな組織や個人にもっと広く自社の株を買ってもらい、それによってよりたくさんの資金を調達したい企業は、証券取引所で自社の株を取り扱ってもらいます。証券取引所の株は誰でも買ったり売ったりすることができます。

証券取引

証券取引所は日本に4つある

証券取引所は日本に4つあります。 

  1. 東京証券取引所(東証):日本でも最も多くの会社が上場している証券取引所。東証はさらに、審査基準が異なる5つの市場に分かれています。
  • 市場第一部:大企業向け市場
  • 市場第二部:中堅企業向けステップアップ市場
  • マザーズ:成長企業向けステップアップ市場
  • JASDAQ:多様な業態・成長段階の企業向け市場
  • TOKYO PRO Market:プロ投資家向け市場 
  1. 名古屋証券取引所(名証):名古屋を拠点にする証券取引所で中部地方の企業が多く上場しています。上場基準によって、市場第一部、市場第二部、成長企業向けのセントレックスの3つの市場に分かれています。
  • セントレックス:成長企業向けステップアップ市場 
  1. 福岡証券取引所(福証):福岡を拠点とする証券取引所です。上場企業は九州地方の企業が中心です。2つの市場に分かれています。
  • 本則市場:一定の実績があり、安定性と成長性を兼ね備えた企業向けの市場
  • Q‐Board:成長企業向け市場 
  1. 札幌証券取引所(札証):札幌を拠点とする証券取引所。上場会社は北海道の企業が中心です。2つの市場に分かれています。
  • 本則市場:一定の実績がある企業が対象。
  • アンビシャス:中小・中堅企業向けの育成市場。北海道に関連のある企業が対象。

こうした証券取引所のいずれかに、会社の株式を取り扱ってもらい、さまざまな投資家が売買できるようにすることが、IPOです。

投資家

これからIPOしようとする会社の株(IPO株)を上場直前に公開価格(売り出し価格)で購入し、IPO後にその株を売却して利益を得ることを、IPO投資やIPO株投資と呼んでいます。 

IPO株投資の魅力

上場後に初めて市場でついた値段=初値は公開価格を超えていることが多く、初値で売却すれば比較的高い確率で売却益を手にすることができます。ただし、勝率が高いということであり、「必ず」儲かるということではありません。

それなら、誰もがIPO株にだけ投資して初値で売ればいいことになりますが、そううまくは行きません。IPO時に売り出される株数には限りがあり、買いたい人の方が多いことが一般的だからです。そのため、IPO株は証券会社の抽選に当選した人だけが購入できたり、店舗型の証券会社の営業マンが自分の上客にだけ手配したりといったかたちで、限られた人だけが購入できるのです。また、その際にひとりの投資家が購入できる株数にも限りがあります。

そのため、IPO株を公開価格で購入して初値で売却するだけでなく、初値がついたあとに市場でIPO株を購入して、値動きをみて売却する投資家もいます。こうした取引のことはセカンダリーマーケットと呼ばれています。

株取引の流れ

では公開価格でIPO株を買うにはどうすればよいのでしょうか。証券取引所への上場が承認された会社がIPOするまでの流れに沿って見ていきましょう。

①仮条件の決定 → ②ブックビルディング → ③公開価格が決定 →
④投資家の購入申込み → ⑤抽選 → ⑥上場 → ⑦売買成立=初値が付く

仮条件とは?

これからIPOする会社の世話役的なポジションにある証券会社(主幹事証券会社と呼ばれます)が、機関投資家の意見や同業他社の株価、市場環境などを参考に、公開価格はこれぐらいが適当だろうという価格のレンジを決めます。例えば、1,100円~1,500円のような形です。これを仮条件と呼んでいます。 

ブックビルディングで公開価格が決まる

仮条件のレンジの中で、投資家が自分ならこの株をいくらで何株買うかを申告します。これがブックビルディングです。その結果いちばん多くの申告があった価格が売り出される価格になります。これが公開価格と呼ばれるものです。

投資家の購入申込み・抽選

公開価格が決まったら、購入申込みを行います。証券会社に割り当てられている株数よりも申し込み数が多い場合は抽選になり、当選者はIPO株を購入できます。 

上場と初値

上場日に市場が開くと、公開価格からのスタートで、その会社の株に売り注文と買い注文が入ってきます。そして、売り注文数より買い注文数が多いうちは売買は成立せず、株価が上昇していきます。売り注文数が買い注文数と一致したときに初めて取引が成立し、その時の値段が初値と呼ばれます。

このとき、公開価格よりも初値が高ければ、そのIPO株を売った人は差額を利益として手にすることができます。その日のうちに初値が付かず、翌日以降に持ち越されることもあります。

以上がIPO株の取引の流れです。

IPO株を買う

IPO株を公開価格で買うには、上記で説明したブックビルディングに参加する必要があります。オンライン証券会社を含むほとんどの証券会社でブックビルディングに参加することができます。ただし、証券会社によって、そのIPO株を何株引き受けているかが違っていて、通常は主幹事証券会社が引き受ける数が最も多くなっています。ただ、主幹事証券会社になるのは店舗型で歴史の長い証券会社が多く、そこではフラットな抽選ではなく、営業マンが自分の上客に優先的に配分することが多いと言われています。

オンライン証券会社でも、各サービスによって、抽選のしかたに違いがあり、たくさん参加して抽選に外れている人に当たりやすくするバイアスをかけているところもあれば、完全にフラットな抽選のところもあります。最初は自分がアカウントを持っている証券会社でIPO株にトライしてみて、不満があれば自分に適した証券会社を探してみるのもよいでしょう。

IPO株を初値で売った場合の騰落率は2000年~2016年の平均がプラス60%で、勝率は75%【*1】となっており、統計的に勝ちやすいということが伺えます。本稿執筆時(2020年3月)の前年にあたる2019年でも、初値が公開価格を上回った割合は、75勝9敗1分けという結果【*2】で、88%という高い勝率になっています。 

ただし、初値が必ずしも上場直後の最高価格とは限らず、初値のあとも力強く上昇するケースもあります。例えば2018年5月31日に上場したネット印刷サービスのラクスルは、翌年(2019年)1月29日までに株価が初値の約1.8倍になっています【*3】。

また、初値からいったん下がったあと、短期・中期・長期的に順調に成長していく株もあります。したがって、どんな会社の株なのか、また、自分の投資のスタイルはどういうものか、今回の取引でどんな戦略を取るのかなどによって、初値付近で売るべきかどうかが変わってきます。 

例えば、すでに長年営業されてきていて事業規模も大きく、また上場後はさらに成長が期待されているような有望企業のIPO株の場合で、すぐに利益確定しなくてもよいなら、売却せずに長期にわたって保有し続けるという選択肢が有効な場合もあります。

*1 出典:『IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(西堀敬 著)掲載の表「IPOの勝敗と初値騰落率(2000年以降)」を基に、2000年から2016年までのデータの平均を算出。
*2 参考:2019年12月27日付 日本経済新聞。
*3 参考:2019年1月30日付 日本経済新聞。

セカンダリーマーケット

多くの人が直面するIPO株のハードルであり、大きな不確定要素でもあるのは、購入したくても抽選に当たらないと買えないということでしょう。この課題に対するひとつの解に、上場してから市場で買うというものがあります。これはセカンダリーマーケットと呼ばれています。例えば、初値がついた後に株価が下がったタイミングを見計らって買い、その後の上昇局面で売却して利益を得るといった手法です。この場合でも、投資家それぞれの戦略により、デイトレード的な超短期の取引から長期保有まで、さまざまなスタイルがあり得ます。

どのような戦略でIPO株にチャレンジするとしても、欠かせないのは購入前に企業のプロフィールをしっかり確認することです。IPO株が購入できる証券会社のサイトではIPO株の売出しが予定されている会社についての情報が必ず掲載されていますので、最低限それを確認するべきでしょう。

また、詳細な企業情報が株式売出届出目論見書と呼ばれる書類にまとめられています。IPO株は人気レース的な要素が比較的強いと考えられますが、ある程度の期間、保有するつもりがある場合や、売りどきを逃して結果的に長く保有することになる場合もあるので、財務情報なども確認した上で購入したいところです。

IPO株にチャレンジ

これから上場する予定の企業の株を購入して、証券取引所に上場した後の高値で売却して利益を得るというのがIPO株投資の基本です。人気の企業の場合はなかなか抽選に当たりませんし、上場後の売りのタイミングもテクニカルな要素がある取引です。通常の株式投資の経験が十分あり、リスクマネジメントができる人以外は、IPO株投資は自分の投資活動のメインに据えるのではなく、トッピングのようなもの、あるいはゲームぐらいの感覚で楽しむというスタンスがおすすめです。

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