住宅ローンの繰り上げ返済は場合によっては投資よりおトク!

文: みんなのマネープラン編集部  監修:大間 武(ファイナンシャルプランナー)

人生最大の買い物ともいわれるのが住宅。当然、購入費用は高額になりがちで、住宅ローンを利用してその資金を準備するのが普通です。特徴のひとつは返済が長期にわたること。ただし、だからこそ賢くおトクに利用する方法もでてきます。ここでは、そんな住宅ローン活用のコツを紹介します。

住宅ローンは住宅の購入やリフォームなどにかかる費用を金融機関から借り受ける方法。新築物件に限らず、中古物件でも利用できます。借入金は長い期間をかけて分割で返済することになりますが、賃貸物件に毎月支払う家賃と同程度のことも多く、返済しながら住み続ければ最終的にはその物件が自分のものになります。 

とは言えこれも一種の借金ですから、返済期間中には利子がかかります。住宅金融支援機構のデータによると、2020年2月時点で民間の住宅ローンを利用した場合の平均的な金利は、10年間の固定金利期間選択型ローンで年間3.2%、固定金利期間が3年間なら2.9%。変動金利型で約2.5%です。 

この金利は住宅ローン以外の融資の利子に比べれば低いと思えるかもしれませんが、住宅購入資金は金額が大きく、住宅ローン借入金も高額になります。返済計画は35年間などというケースも少なくありません。この間、利子がかかり続けるため、それだけでかなりの金額になってしまうのです。

かかり続ける利子 

では、この利子を減らすにはどうすればいいのでしょうか? 利子は借入金の残高に対して課せられますから、元金が大きく、返済期間が長いほど総額が増えてしまいます。裏を返せば、そのふたつの要素を少しでも減らせば、それだけ利子は少なくなるということ。それを可能にしてくれる方法が、住宅ローンの繰り上げ返済なのです。 

繰り上げ返済というのは、その名のとおり先々返す予定になっているローンを、生活に余裕がある範囲で一足早く返済する方法のこと。ただし、繰り上げ返済によって一時的にまとまった金額を返した後のローン返済法にはふたつの選択肢があります。 

返済軽減型

ひとつ目は、返済軽減型。完済までにかかる期間は変えずに、月々の返済額を減らす方法です。繰り上げ後に子供の教育費や転職などが予想されていて、貯金などに不安があるという人に適しています。 

期間短縮型

ふたつ目が期間短縮型で、毎月の返済額はそのまま、完済までの期間を短くします。こちらの方が利子の減少効果は高く、より早く完済もできるため、メリットはより大きなものになります。定年を見越して少しでも早く完済したいという人にはうってつけの方法です。 

早く完済したい住宅ローン

繰り上げ返済によって得られる利子の引き下げ効果。その大きさは、ローンにかかわる3つの要素で決まります。金利と残高の大きさ、そして繰り上げを行う時期です。 

  1.  金利
  2.  残高
  3.  繰り上げ時期 

まず金利ですが、これが高いほど借入金に対する利子額も大きくなるため、繰り上げ返済で残額を減らせればそれだけ利子を抑えることができます。もし金利の異なる複数のローンを利用しているなら、より高金利のものから先に繰り上げ返済を行うべきです。 

次の残高ですが、同じ金利でも残高が大きいほど利子は高額。そのため、当初の借り入れ元金が大きい場合ほど、繰り上げ返済によるメリットも期待できるといえます。 

最後の繰り上げの時期は、できるだけ早いほうがお得になります。繰り上げ時期が早いということは残っている元金が大きいということであり、これから必要な利子の総額が大きいだけでなく、利子支払いが必要な期間も長いということ。早め早めに手を付けることで、その分だけ返済期間を短縮し、利子を大きく減らすことができます。 

繰り上げ返済を考えるなら、これらの3つのポイントを頭に入れてより効果的に利用すべきなのです。ただし、繰り上げ返済にはもうひとつ大原則があります。それは、かならず手持ちの資金を考慮しながら利用しなければいけないということです。 

月々の返済に加えて、高額の資金をまとめて返済に充てることになるため、きちんと計画して行わないと生活を圧迫しかねません。また、余裕があるタイミングで何度も繰り上げ返済を行うケースがありますが、その度ごとに手数料が必要になります。メリットがいくら大きいとはいえ、できればこの分も抑えたほうが賢明です。

下手な資産運用

実際、繰り上げ返済によるメリットは、かなり大きなものになります。具体的な例を挙げてみます。 

まず、当初の借り入れ金額が2,500万円、35年ローンを組んでいたとしましょう。借り入れ時の金利が2.6%だった場合、返済総額となるのは、およそ3,800万円ほどです。つまり、借入額の半分以上の利子がかかってしまいます。 

このとき、借り入れから5年目で100万円の繰り上げ返済を行ったとするとどうなるでしょうか。その際の返済総額は、3,700万円弱まで引き下げられます。つまり、100万円繰り上げを行ったことで、100万円の利子を減らせたということになります。さらに、これによって返済期間は残り30年から28年1カ月に。およそ2年間も短縮できるのです。 

100万円の余裕資金があれば、そのまま返済にまわすより運用して増やしてから返した方が効率的かもしれないと考える人がいるかもしれません。しかし、それは決して正しいとはいえません。 

繰り上げ返済の効果を投資に置き換えて考えると、繰り上げした借り入れ5年目のタイミングで100万円分の投資を行い、28年後にそれが100万円の利益を生んだということになります。これは年率3.5%ほどで運用することと同じです。近年、2016年のマイナス金利政策の影響もあり、定期預金でも利率は高くて0.2%ほど。それに対してこの運用率はかなり高いといえます。しかも投資や運用にはリスクが伴うもの。つまり、必ずしも思い通りにはいかないのが当たり前なのです。 

しっかりチェック

一方、そもそもローンの返済はその時点で28年後のマイナス100万円が確定します。つまりこの方法なら確実に約100万円おトクになります。こうした点を考えると、いかにこの方法がメリットの大きいものかわかるでしょう。 

ただし、繰り上げ返済でも、ボーナス払いを選択しているケースや、変動金利が関わるかたちでの借り入れを行っている場合、必ずしも同じような効果があがるとは限りません。また、ここのところの超低金利や消費税率の引き上げなどの影響もあって、住宅ローンを取り巻く環境も大きく変わっているので、要注意です。 

住宅ローン減税もそのひとつ。これは住宅ローンの借り入れから10年間、毎年の年度末に借入残高の1%が所得税と住民税から控除されるというものです。繰り上げ返済で残高が減るのはいいのですが、借入残高が減るので当然この控除分も減少してしまいます。その点も考えなければなりません。 

確かに、繰り上げ返済は有利な仕組みではありますが、安易に手を出すことなく、事前にしっかりと自分の場合の条件を確認し、より効果的に返済できるように備えることが大切です。

住宅購入を助けてくれる住宅ローン。きちんとその性質を理解し、どんな条件で借り入れをしているのかを十分理解した上で繰り上げ返済を利用すれば、よりおトクに住宅ローンを活用できます。すでに住宅ローンを借り入れているという人も、これから利用しようと考えている人も、ぜひ一度自分の条件で金額をシミュレーションし、利用を検討してみてください。

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