『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』ブックレビュー

『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』ブックレビュー

あなたがこれから銀行へ行く用事があるとしたら、どんなイメージを思い浮かべるでしょう。「手続き」「待ち時間」「めんどう」などのキーワードが湧く人も少なくないのではないでしょうか。今は、残高確認や振込などもスマホひとつでできますので実際に銀行へ足を運ぶ機会は減少していることでしょう。そんな銀行はこれかどうなっていくのか。
この1冊は、AIの発達によって様々な業種で変革が求められているこの時代において、近い将来に『アマゾン銀行』が誕生することを想定しつつ、金融業全体の行く先を占っています。

『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』
著者:田中道昭(たなか みちあき) 出版社:日経BP 単行本:432P

【どんな本?】
アマゾンのほか、スマホ決済アプリなどを運営する中国企業のアリババやテンセントに代表されるテクノロジー企業が、どのように金融業界への参入を計っているのか、そして、それに対し既存の金融機関がどのように対抗しようとしているのかを通し金融業の新しい形を見ていきます。

金融機関

田中道昭:立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。株式会社マージングポイント代表取締役社長。シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略、及びミッション・マネジメント&リーダーシップ。著書に『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』(以上、PHPビジネス新書)、『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)などがある。(「BOOK著者紹介情報」より抜粋)

擬似的に創造

50P
金融はもはやDuplicate (擬似的に創造)できるということです。今まで銀行が独占していた預金、貸出、為替といった業務が、銀行の独占ではなくなりつつあります。厳しい規制に縛られる銀行の免許を取得しなくても、金融業はすべて疑似的に創造することが可能です。

・どの業種にも共通すると思いますが、顧客満足を追求しなければやがて淘汰されるのは必然でしょう。これまで足を運ぶと窓口で待たされたり、書類のやりとりが煩雑であったりなど「不便」が当たり前だった銀行ですが、そこに「顧客第1主義」を企業理念に持つというアマゾンのようなインターネット企業が参入することになるのは自然な流れなのかもしれません。

信用力のスコア化

166P
ジーマクレジットは社会インフラ定着した感すらあるのです。「就職に有利」「婚活に利用できる」~
多面的な基準を設定しており、ユーザーは信用スコアを上げるために日常生活全般にわたって規律正しくしようとする意識が働きます。


・本書の中では中国を「世界最先端のフィンテック大国」としています。「ジーマクレジット」は、中国企業であるアリババ、アントフィナンシャルが蓄積してきたビッグデータを利用することで可能となった、個人や企業の信用力のスコア化のことです。これまでの銀行では貸出を行うにあたり担保や保証が重視されていましたが、ジーマクレジットでは、支払能力のほか行動履歴や人間関係などの5つの基準が設けられているそうです。

人間の本質的な信用を数値化される点についてはある面ではちょっと怖い気がしますが、新しい視点を金融に持ち込み、国民の規律意識まで高めている部分は一種の発明とも言えるのではないでしょうか。

カスタマーエクスペリエンス

329P
メガバンクをディスラプトしようとしているテクノロジー企業が最大の武器としている顧客第1主義やカスタマーエクスペリエンスをメガバンクが本当に理解しているかどうか。私はまだ大いに懐疑的に思っています。
335P
次世代金融の覇権を巡る戦いは、メガバンクにとっても、私たち日本人にとっても、「絶対に負けられない戦い」なのです。

・第3部 第8章より、日本の既存メガバンクについてです。プライドの高いイメージがあるメガバンクですが、これまでの「当たり前」を捨てる自己否定とも言える苦痛とともに、生まれ変わることができるでしょうか。すでに、ベンチマークすべきは同業他社ではなくアマゾンやアリババ、テンセントなどの米中メガテック企業であるべきなのでしょう。

パラダイムシフト

先進国では多寡の差はあれど、インターネットの恩恵を享受している人間がすでに多数派と言えるでしょう。インターネットの登場により様々な場面でこれまで多くの「当たり前」が変貌を遂げてきました。本書411Pには図表10-8として『働き方にインパクトを与える12のパラダイムシフト』がまとめられています。今後はより一層、企業も個人もこれまでの「当たり前」に捉われない柔軟な姿勢が重要になってくるのではないでしょうか。

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