『THE END OF BANKING ジ・エンド・オブ・バンキング 銀行の終わりと金融の未来』ブックレビュー

『THE END OF BANKING ジ・エンド・オブ・バンキング 銀行の終わりと金融の未来』ブックレビュー

『THE END OF BANKING ジ・エンド・オブ・バンキング 銀行の終わりと金融の未来』。このタイトルにある「銀行の終わり」というワードを目にすると、近い将来ソーシャルレンディングやP2Pレンディングのようなしくみの拡大とAIの発達によって銀行不要論を唱える内容をイメージしそうですが、本書では新時代の金融システムの幕開けとして、信用からマネーの創造をする「システム」の排除を提言する内容となっています。

『THE END OF BANKING ジ・エンド・オブ・バンキング 銀行の終わりと金融の未来』
著者:ジョナサン・マクミラン(Jonathan McMillan) 訳者:桜田 直美(さくらだ・なおみ)
出版社:かんき出版 単行本:288P

【どんな本?】
大きく3つのパートに分けて構成されています。

PART1 産業化時代のバンキング
第1章 バンキングが必要だった時代
第2章 伝統的なバンキングのしくみ
第3章 バンキングの諸問題
PART2 デジタル時代のバンキング
第4章 バンキングは銀行だけの仕事ではない
第5章 シャドーバンキングのしくみ
第6章 2007年から2008年の金融危機
第7章 2008年以降の金融システム
PART3 デジタル時代の金融システム
第8章 バンキングはもはや必要ない
第9章 未来の会計システムがバンキングを終わりにする
第10章 公共セクターの役割

本書ではBANKING(バンキング)の定義を「信用からマネーを創造すること」としています。バンキングを銀行業務のすべてを含むものとしての内容ではないので、これを念頭に置いて読み進めるのが良いでしょう。

信用

【著者】 ジョナサン・マクミラン(Jonathan McMillan):ジョナサン・マクミランは架空の存在である。実は二人の人物であり、マクロ経済学者と投資銀行家という意外な組み合わせだ。二人は大学で出会い、卒業するとそれぞれの道に進んだ。一人は学者になり、銀行のマクロ経済モデルを研究する。もう一人は投資銀行に就職し、複雑怪奇な現代の金融を肌で体験した。2011年、二人はロンドンのパブで再会し、一緒に本を書くことになった。そしてバンキングに関するおたがいの知見を補い合い、本書を完成させた。(「BOOK著者紹介情報」より抜粋)

【訳者】 桜田 直美(さくらだ・なおみ):翻訳家。早稲田大学第一文学部卒。訳書に『トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法』『より少ない生き方』(いずれも、小社刊)、『こうして、思考は現実になる』『こうして、思考は現実になる(2)』『「感謝」で思考は現実になる』(いずれも、サンマーク出版)、『うまくいっている人は朝食前にいったい何をしているのか』( SBクリエイティブ)などがある。

産業化の時代

59P
銀行は信用を拡大することで、経済に供給するマネーの総量を決めているということだ。このしくみを賞賛する人もいるが、信用からマネーを創造するというシステムには深刻な副作用も存在する。

・PART1では、産業化の時代にバンキングが果たした役割について書かれています。バランスシート(貸借対照表)の簡略化した説明もあり、会計の知識がない人にも理解しやすいでしょう。信用からマネーを創造するという錬金術のような側面を持つこのしくみが、時代とともに終焉を迎えるのは必然かもしれません。

リーマンショック

143P
リーマン・ショック以降、さらなる大手銀行の破綻は何としても避けなければならなかった。これはいわゆる「大きすぎてつぶせない」という状態だ。

・大手銀行が預金だけでなく、広範囲に保証を受けられるようになったことで、モラルハザードの問題がエスカレートし、制御不能になったとしています。大きすぎてつぶせないとされる銀行は日本でいうと、みずほ銀行・三井住友銀行・三菱UFJ銀行あたりでしょうか。日本の問題としても受け止めることができそうです。

理想の世界

260P
もう壊れたバンキングシステムと共存する必要はない。今こそバンキングの終わりを要求するべきだ。

・本書で語られているものは、あくまで理想とされる青写真にとどまっている印象もありますが、これまでのしくみと規制では、近い将来の金融危機が起こるとする点については十分に説得力を感じます。バンキングはもはや必要ないとまで言い切り、バンキングの存在しない金融システムを理想に掲げる著者の理想は、デジタル革命によって現実のものとなるのでしょうか。

金融の未来

冒頭でも紹介したように、本書ではBANKING(バンキング)の定義を「信用からマネーを創造すること」とし、銀行業務のすべてがバンキングに含まれるわけではないとの記述もあります。そのためTHE END OF BANKINGを「銀行の終わり」と訳すのはいささか無理があり、邦題の作成に労した様子が伺えます。

内容としては、これまで信用創造の発展を担ってきた金融機関がその役割を終え、デジタル技術によってそれを補えるという提案がされていますが、現行のバンキングシステムからバンキングの存在しない金融システムへの移行についてと、世界経済に及ぼす影響については触れられていないため、どれほどの実現可能性があるのかは未知数です。

しかし、これまで実態のないマネーを生み出してきた信用創造の問題点を整理し、デジタル時代の到来に備えるためにも一読してみてはいかがでしょうか。

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