『「新型コロナ恐慌」後の世界』ブックレビュー

2020年6月時点、いまだ世界は新型コロナウイルスの脅威にさらされている渦中にあります。経済活動の一時停止を余儀なくされ、すでに、そして、これから訪れるであろう新型コロナウイルスに関連する影響での経済的混乱は、多くの人にとっての不安材料であり、高い関心となっているのは間違いないでしょう。

このタイミングでの『「新型コロナ恐慌」後の世界』。食指を動かされるタイトルです。本書の出版は2020年3月27日ということですから仕事が早い。Amazonの経済協力部門では、ベストセラーとなっています。

『「新型コロナ恐慌」後の世界』
著者:渡邉哲也(わたなべ てつや) 出版社:徳間書店 単行本:254P

【どんな本?】
以下の各章に分けて構成されています。

プロローグ 「新型コロナ」恐慌で始まる負の連鎖
第 1 章  「武漢ウイルス」で中国はどこまで崩壊するか
第 2 章  アメリカは弱り目の中国を、こうして潰す
第 3 章  危機を乗り越え日本は繁栄する
第 4 章  グローバリズムの終焉で逆転する世界
第 5 章  「新型コロナ」後の世界

内容としては、アメリカと中国、もしくは世界と中国の関係を主題に、多くが中国に関わる話で進められています。それらが今回の新型コロナウイルスの混乱で、加速度的に表面化したものとしてうまく咀嚼されている印象です。

信用

渡邉哲也(わたなべ・てつや):作家・経済評論家。1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。大手掲示板での欧米経済、韓国経済などの評論が話題となり、2009年、『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告し大反響を呼んだ。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行っている。著書に『これからすごいことになる日本経済』『パナマ文書』 (徳間書店)の他、多数。(「BOOK著者紹介情報」より抜粋)

産業化の時代

68P
銀行チャイナマネーで機能不全を招いたWHO

・本書の出版時にはなかった事実として、現時点でアメリカのトランプ大統領がWHO(世界保健機関)からの脱退を表明するまでに至ってしまいました。WHOが実際に中国に忖度しているかについては個人の見解に委ねるとして、こと新型コロナウイルスの世界的蔓延抑止の働きとしては結果、WHOの初動の遅れがあったことは否めないのではないでしょうか。新型コロナウイルスの発生源についてまで、アメリカと中国の責任の押し付け合いのような展開がありますが、良くも悪くも中国が今後の世界の行方を占うキーとなっている印象が色濃く残ります。

リーマンショック

180P
新型コロナウイルスは、日本の抱える大きな問題と中国と日本との関係、行きすぎた構造改革によるインフラの脆弱化など、さまざまな問題を露見させ、異文化とどのようにつきあうべきか、安全保障と経済との関係など、さまざまな宿題を日本社会に与えたものである。
~チャンスととらえることができれば、ふたたび強い日本を取り戻すことができると思う。

・各社マスコミが報道するニュースにも先入観があるのと同様、本書にも著者の先入観があることは無視できませんが、ネガティブな情報が目に付く中、日本人の耳に心地よい情報を求めてしまいます。希望的観測であることを念頭に置きつつも、日々変化するポストコロナ時代において、各個人が世界の中の日本の立ち位置を意識して日本の未来を創造してゆかなければならないでしょう。

理想の世界

189P
平成の終わりとともに、米中対立という新たな冷戦が勃発し、グローバリズムは終焉に向かおうとしている。 

・著者は、新型コロナウイルスをひとつのきっかけとして世界のグローバリズムは崩壊し、さらにアメリカと中国の切り離し(デカップリング)が進めば、世界の市場から中国の遮断や追い出しが一気に進むことが想定されるとしています。日本から見た場合、中国は領土問題などもあり脅威である一方、地理的にも歴史的にも完全なる切り離しとなるとどこまでのリアリティーがあるのでしょうか。そして、それは正しい判断なのでしょうか。隣国同士仲良くという理想論を述べるつもりはありませんが、切り離しという極論はその理想論と対極に位置するという意味で、感情論にも近い印象です。

金融の未来

さまざまな情報が溢れる今の時代、意識的、もしくは無意識的にも結論ありきでの情報収集、理論武装が可能です。本書は著者の政治観からか、基本的に中国に否定的な記述が続きます。この点については当然、賛否両論あると思いますし、終始受け入れがたい内容であると感じる人もいるでしょう。著者の過去作には『これからヤバイ 米中貿易戦争』『「中国大崩壊」入門』『「韓国大破滅」入門』などがありますので、傾向については察していただきたいところです。

読み手の持つ政治観や歴史観などによっても大きく印象と評価が変わってくると思いますので、賛否に関わらず冷静にひとつの見方としてとらえることが重要になってくるのではないでしょうか。日本人には耳に心地の良い部分もありますが、個人的には今回のコロナ禍が無駄な争いを増やさないことだけを願います。新型コロナウイルスの流行があって、より輪郭が明確となった世界情勢を整理するのにおすすめの1冊です。

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