受けられる控除を見逃さないのが鉄則! サラリーマンの節税方法を解説

サラリーマンに節税は関係ないと思っていませんか。サラリーマンの場合は会社が税務処理を行うため、節税を意識する機会が少ないので、そう思うのも無理はないかもしれません。しかし、同じ所得でも「控除額」の大きさで税額は変わります。その控除額を最大限にできるのは会社ではなく自分です。ここでは、そのために必要な知識とテクニックをわかりやすく解説します。

代表的な所得の種類を確認

サラリーマンが節税を意識する税金といえば、所得税と住民税でしょう。どちらも所得にかかる税金です。そこで、節税のためには、まず所得の種類をきちんと把握するところからはじめましょう。

所得税法では、所得は「給与所得」や「事業所得」「雑所得」など10種類に分類されます。そのなかでサラリーマンに最も関係のある給与所得、また預貯金や資産運用などに関係する「利子所得」「配当所得」「不動産所得」、副業に関係する「雑所得」についてそれぞれ簡単に解説します。

  • 給与所得…会社から支払われる給与やボーナス。
  • 利子所得・配当所得・不動産所得…預貯金の利子、株式の配当金、不動産の家賃収入。不動産所得のみ、赤字が出たとしても他の所得と相殺することが許されています。これを「損益通算」と呼びます。
  • 雑所得…給与所得や事業所得、利子所得など定義が明確な他の9種類に当てはまらない所得すべて。公的年金やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を年金形式で受け取った場合の給付金、サラリーマンが副業で得た所得も多くはこれに入ります。

節税したいなら「控除」に注目!

所得税は「課税所得×所得税率」で算出するため、課税の対象となる所得が少なければ所得税も少なくなります。課税所得は、所得から各種の控除額が引かれた後の額です。この控除を「所得控除」と呼びます。

また、算出された所得税額から控除される「税額控除」もあります。所得控除の場合、税率をかける前の段階で所得から差し引くことになりますが、税額控除では、すでに算出された所得税額から一律金額を差し引きます。そのため控除の金額が同じであれば、税額控除のほうが節税効果は高くなります。

節税のためには、適用されるべき所得控除、税額控除をもれなく受けることが基本となります。そこで、見落としがちな条件があるものを中心に、控除の種類と控除額、適用条件などを見てみましょう。

所得控除

  • 扶養控除…条件を満たす子や親がいるときに受けられる控除。基本控除額は38万円で、教育費や介護費などを考慮して、扶養者の年齢により63万円や58万円などの優遇措置があります。条件を満たしていれば、別な場所に暮らしている親なども扶養の対象になります。
  • 医療費控除…1年間の医療費が10万円を超えた場合に受けられる控除ですが、平成29年の法改正で、医療費が10万円を超えない場合でも受けられる「セルフメディケーション税制」もできました。いずれの場合でも、扶養者にかかった費用も対象となります。医療費控除とセルフメディケーション税制を同時に利用することはできないため、どちらかを選択する必要があります。
  • 生命保険料控除…「生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」のそれぞれの支払い保険料に応じて控除が受けられます。保険料を支払ったのが納税者であれば、保険の名義は配偶者でも構いません。
  • 特定支出控除…通勤費や資格取得費、衣服費などサラリーマンの必要経費の控除です。例えば、営業部署に所属していれば「ビジネススーツ」は必要ですので、特定支出となります。会社の証明書や各種明細書などさまざまな書類が必要となり、他の控除に比べて手続きが煩雑です。
  • 寄付金控除…国や地方自治体、日本赤十字社や学校法人など、特定の団体に寄付をした場合に受けられる控除。「寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるもの」や「政治資金規正法に違反するもの」などは、該当しません。「ふるさと納税」もこれにあたり、所得税では所得控除、住民税では税額控除の対象です。
  • 小規模企業共済等掛金控除…小規模企業共済や確定拠出年金などの掛け金に対する控除。健康保険や年金保険料の「社会保険料控除」に準ずるもので、控除額に上限のある「生命保険料控除」より有利です。このあと説明するiDeCoも対象です。
  • 住宅ローン…住宅ローンを組んで家を購入した場合、住宅ローンの年末残高をもとになされる控除。算出方法や控除を受けられる期間は、住み始めた年によって異なります。控除を受ける最初の年は確定申告が必要ですが、翌年から勤務先の年末調整で処理が可能です。
  • ふるさと納税…所得税では所得控除、住民税では税額控除されます。うまく利用すれば、最大で寄付金総額から2,000円だけを除いた全額が控除されます。

税額控除

  • 住宅ローン…住宅ローンを組んで家を購入した場合、住宅ローンの年末残高をもとになされる控除。算出方法や控除を受けられる期間は、住み始めた年によって異なります。控除を受ける最初の年は確定申告が必要ですが、翌年から勤務先の年末調整で処理が可能です。
  • ふるさと納税…所得税では所得控除、住民税では税額控除されます。うまく利用すれば、最大で寄付金総額から2,000円だけを除いた全額が控除されます。

資産運用による控除

次に、資産運用における控除についても見てみましょう。投資商品の種類によっては、何らかの控除を受けられることがあります。

  • 不動産投資…バブル時代の投機的なイメージを持つ人もいますが、空室の出にくい良い物件を選べば、家賃収入(インカムゲイン)を確保できます。良いタイミングで売却して売却益(キャピタルゲイン)をねらえる、ミドルリスクミドルリターンの投資です。不動産投資ローンを利用できるため、若いサラリーマンが挑戦しやすいといった特徴があります。万一損失が出た場合は、給与所得を含めた総課税所得から損失分を控除できる、損益通算が許されている投資です。
  • 株式投資…配当金や売却益をねらっていきます。しっかり勉強して銘柄を選べば、高い利益を得る可能性があります。しかし、株価変動リスクや流動性リスクなどがあり、ハイリスクハイリターンの投資であることは念頭に置いておきましょう。株式投資を始めるには、ある程度まとまった資金が必要です。仮に売却損が出た場合、配当金との損益通算ができます。
  • 個人型確定拠出年金iDeCo…以前は自営業者や一部のサラリーマンのみが加入できる商品でしたが、2017年から公務員や専業主婦なども加入できるようになりました。私的年金ですが、掛け金が全額所得控除されたり運用益が非課税だったりと、公的年金に準じた優遇措置があります。ただし、60歳まで引き出せない、口座管理料がかかる、運用は自分で行うため元本割れのリスクがある、などのデメリットもあるため注意が必要です。

想像以上の効果!サラリーマンの節税モデルケース

それでは、一般的な控除による節税と資産運用による節税のモデルケースを一例ずつ紹介します。

1.控除による節税(ふるさと納税)

以下のような場合について見てみます。

・年収700万円(課税所得560万)

・家族(専業主婦の妻 高校生1人) 

・70,000円のふるさと納税を実施

総務省ふるさと納税ポータルサイト記載の計算式(※)を用いて算出してみましょう。

所得税からの控除額は、(ふるさと納税額-自己負担額2,000円)×「所得税の税率」で出すことができます。税率は課税所得の額によって決まっており、560万円の場合は20%です。従って、次のようになります。

(70,000円-2,000円)×20%=13,600円…(1)

住民税からの控除額は全ての寄付金控除に適用される「基本分」と、ふるさと納税だけに適用される「特例分」があります。基本分は(ふるさと納税額-自己負担額2,000円)×(住民税の税率)で出し、特例分は(ふるさと納税額-自己負担額2,000円)×(100%-住民税の税率-所得税の税率)で出します。住民税の税率は所得に関係なく一律10%ですので、次のようになります。

基本分(70,000円-2,000円)×10%=6,800円…(2)

特例分(70,000円-2,000円)×(100%-10%-20%)=47,600円…(3)

所得税と住民税を合わせると、(1)+(2)+(3)=68,000円の節税となります。

※総務省ふるさと納税ポータルサイトhttp://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html

2. 資産運用による節税(不動産投資)

以下のような場合について見てみます。

・年収520万円(課税所得400万円)

・独身

・鉄筋コンクリート(RC)の区分所有マンション2,000万円を、全額不動産投資ローンを組んで購入。
家賃収入は90万円、1年目だったため不動産所得税や諸経費なども含めた必要経費は220万円。

上記の場合、以下のような節税が可能です。

所得税は、課税所得×所得税の税率―控除額で出します。所得税の税率も控除額も課税所得によって決まっています。この控除額は所得控除や税額控除のことではなく、正確に出すには複雑な計算が必要になる所得税額を簡単に出すために国税庁が作成した、「所得税の速算表」にある控除額のことです。課税所得400万円の場合、所得税の税率は20%、控除額は42万7,500円です。従ってこの場合の所得税額は、次のようになります。

400万円×20%-42万7,500円=37万2,500円…(1)

また、住民税額は課税所得×住民税の税率10%なので、次のようになります。

400万円×10%=40万円…(2)

従って、この場合にかかる所得税と住民税の合計額は(1)+(2)=77万2,500円(★)です。

一方不動産所得は、不動産を購入した年ということもあり、家賃収入90万円から必要経費220万円を引いた、130万円の損失になっています。

以上を損益通算すると、課税所得400万円―不動産所得の損失額130万円=270万円が課税総所得となります。課税総所得270万円の場合は、所得税の税率は10%、「所得税の速算表」にある控除額は9万7,500円、また住民税率は10%なので、次の額になります。

所得税270万円×10%-9万7,500円=17万2,500円…(3)

住民税額270万円×10%=27万円…(4)

従って、損益通算した後にかかる所得税と住民税の合計額は(3)+(4)=44万2,500円(☆)となります。

結果、節税額は★77万2,500円-☆44万2,500円=「33万円」となり、人によっては月収に近い金額の大きな節税となることがわかります。

まとめ

紹介したように、サラリーマンが受けられる控除はいろいろあります。それぞれの控除の内容をしっかり把握し、自分に適用される控除を最大限受けることが、サラリーマンの節税方法の基本です。会社任せにせず、控除を増やすことができないか、再度確認してみましょう。また資産運用は「お金を増やす」というだけでなく、たとえ損失が出てしまったとしても損益通算によって控除が可能であることも覚えておくとよいでしょう。

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