年金だけで大丈夫?「必要な金額」を把握して老後に備えよう!

今までは老後の生活資金として公的年金があてにされてきました。しかし、年金だけで老後の生活ができるのか懸念を持っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。「老後破産」「老後貧乏」という言葉を耳にすることもありますが、こうした事態を避けるためにも老後の備えをしっかりしておくべきでしょう。今回は、年金や老後の備えのための基礎知識を解説します。

一般的に年金と呼ばれているものは「公的年金」のことをさします。公的年金には、個人事業主や会社員、公務員や専業主婦など全国民共通の制度となる国民年金と、会社員が加入する厚生年金の2種類があります。もう一つ、公務員や私立学校教員のための共済年金もありましたが、2015年10月に厚生年金に統合されました。

会社員の夫と専業主婦の妻ならば約22万円

厚生労働省が発表した「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(第1号、老齢年金)の月額平均支給額は145,638円でした。男女別にみると、男性が166,863円、女性が102,708円です。また、国民年金(老齢基礎年金)の平均支給額は55,373円となっています。

あくまでモデル計算ですが、共稼ぎで会社勤めを続けていた夫婦への年金支給額は約27万円、夫が会社員で妻が専業主婦の場合は約22万円、夫が個人事業主で妻も個人事業主か専業主婦ならば約11万円ということになります。

また、厚生年金の支給開始年齢は生まれた時期によって違います。男性は、1953年4月2日生まれならば支給開始年齢は61歳ですが、生まれた年が後になるほど遅くなり、1961年4月2日以降の生まれならば65歳となります。国民年金は生まれた年に関係なく65歳からです。ただし、国民年金・厚生年金ともに支給開始を遅らせることもでき、その場合は支給額が繰り下げた期間に応じて増額されます。

もし1961年4月2日以降に生まれた人たちが60歳で定年退職したならば、5年間、年金も給料も無しで過ごすことになります。

この厚生年金の支給開始年齢は、法改正により以下のように引き上げられてきました。

  • 1954年…男性が55歳から60歳へ引き上げが決定
  • 1985年…男性が60歳から65歳へ、女性が55歳から60歳へ引き上げが決定(男性には60歳~65歳まで特別支給の老齢厚生年金を支給)
  • 1994年…老齢厚生年金の定額部分について、男性・女性ともに60歳から65歳へ引き上げが決定
  • 2000年…老齢厚生年金の報酬比例部分について、男性・女性ともに60歳から65歳へ引き上げが決定

厚生年金の支給開始年齢については、今よりもさらに遅らせる案がしばしば取りざたされてもいます。

老後の生活に必要な金額の目安

そこで問題になるのが、「老後の生活費はいくら必要か」です。個人差もあるものの、「家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年)」(総務省統計局)の「世帯主の年齢階級別家計収支(ふたり以上の世帯のうち高齢無職世帯)」によると、1ヶ月平均の消費支出は、60〜64歳で約290,000円、65〜69歳で約265,000円、70〜74歳で約243,000円、75歳以上で約215,000円でした。

仮に、60歳で退職して90歳まで生きるとすると、ふたり以上世帯で約9,000万円(※)必要なことになります。よく「老後の資金は1億円必要」といった話を雑誌やインターネット上で見かけますが、それなりに根拠のある数字といえそうです。

※以下の式で算出
(290,000円×12か月×5年<60~64歳>)+(265,000円×12か月×5年<65~69歳>)+(243,000円×12か月×5年<70~74歳>)+(215,000×12か月×16年<75歳~90歳>)=8,916万円

先に見たように、夫婦ともに厚生年金を受給しているならば、老後の生活費をほぼ賄うことができるでしょう。しかし、夫婦のいずれかが国民年金のみの受給ならば月々の生活費が足りなくなるかもしれません。生活費が足りない場合は、貯蓄から補うことになります。

すでに、生活費を補いきれなくなっている高齢者世帯は少なくありません。2018年6月に厚生労働省が発表した調査「生活保護制度の現状について」によると、2018年3月の生活保護受給世帯数は163万9,768世帯で、そのうち53.8%にあたる87万7,847世帯が65歳以上の高齢者世帯でした。世帯数も全体に占める率も、今までで最も高い数字です。

生活保護制度は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するために設けられています。今、自力では最低限の生活レベルを維持できない高齢者世帯がどんどん増えてきています。「老後貧乏」「老後破産」の時代が、すでに始まっていると考えていいでしょう。

実際に必要な支出分を用意できなければ、生活のレベルを下げるか、高齢になっても働き続けるぐらいしか方法はありません。どちらであっても、苦しい老後生活になります。さらに、最低限の生活レベルさえ保てなくなると、今度は生活保護に頼るしかありません。

老後に備えて貯蓄や収入を増やすには

必要な生活費と年金収入との差額を埋めるには、実際に足りなくなってからでは間に合いません。準備しておかなければいけないのは、きちんとした計画のもとの貯蓄と、高齢になってからも無理なく得られる収入です。

貯蓄

貯蓄のためのノウハウはたくさん紹介されています。しかし、「1年間に100万円貯めるには」「退職時に3,000万円残すには」といった、大まかで目的のはっきりしないものは、あまり参考にならないかもしれません。また、「余ったお金を残していく」という姿勢も失敗のもとです。

「世帯人数は何人で、子どもの教育はどこまで受けさせる」「30代・40代・50代での収入はそれぞれこのくらい」「60歳まではフルタイムで働く」「場合によっては65歳定年も視野に入れる」といった将来設計にもとづいて、一生分の支出と収入をしっかりと割り出す必要があります。

この結果、今の収入では必要なだけの金額を貯蓄に回せないといった結論が出るかもしれません。そうなると、専業主婦だった妻も働きに出る、もっと給料のいいところに転職する、といったことを検討する必要も出てくるでしょう。

将来設計に取り組まなければ、こうした問題にも気が付かず、資金が足りないまま老後に突入する可能性が高まります。

収入

定年後も得られる収入の典型は、再雇用により働き続けることや、株式・不動産などに投資をすることです。

とはいえ、なにも退職を待つ必要はありません。むしろ、早めに投資を始めておきましょう。株式投資も不動産投資もしばしば「不労所得」と呼ばれます。しかし、その言葉の持つイメージとは裏腹に、勉強して知識をつけたり、ノウハウを磨いたりといったことが必要になります。若いうちに始めたほうがハードルは低くなりますし、現役時代に貯蓄を増やすのにも一役買ってくれます。

年金制度が頼りにならない現代では、「老後破産」「老後貧乏」は他人事ではない問題です。老後も生活レベルを落とさないためには、周到な準備が必要な時代に突入しています。貯蓄や資産運用をフル活用し、「公的年金の支給がどんなに少額になろうと、自分自身で老後の資金の確保はできている」というレベルを目指していきましょう。

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