不動産価格に影響する収益還元法とは? 種類や計算方法を紹介

不動産投資を検討しているときに悩むことのひとつに、その不動産の価格が適正かどうかということがあります。どれだけ立地がよく、空室リスクが少なく思えても、不動産の価格が相場よりも高すぎれば、利回りは悪くなります。そこで今回は、不動産価格の算出方法のひとつである「収益還元法」について解説します。

収益還元法とは、対象不動産が今後生み出す収益を予想し、そこから不動産の現在価値を求める方法です。

収益還元法は、賃貸用不動産を購入する際に使われ、過去の運用履歴やその数字が信頼できることを前提に計算されます。それらの内容は、不動産会社から提示された資料に記載があります。資料の内容が正確かどうかは自分で精査する必要があります。

もし不正確な資料を基に、不動産の価格を算出してしまうと、その後の投資計画に大幅なズレが生じてしまいます。収益還元法を学び、資料から適正な不動産価格を算出できれば、対象となる不動産が投資するに値する物件かどうかを見極めることにもつながります。具体的なメリットを1つずつ見ていきましょう。

銀行融資が通りやすくなる

収益還元法を学ぶメリットのひとつは、銀行融資が通りやすくなることです。不動産投資では、物件の収益性の度合いによって、売買価格を決める傾向がありますが、売買価格には利回りなどの経費が考慮されていません。しかし、収益還元法は経費を織り込んだ計算方法のため、より正確に物件の価格の判断をすることができます。銀行側から説明を求められた際も、収益還元法を使って算出した数字を説明すれば、説得力を高めることができるでしょう。

また、不動産投資をするにあたり、自己資金と銀行融資を利用して物件を購入する場合は、物件価格に対する融資金額の割合や用意できる自己資金の額によって、必要な融資額や自己資金額も変わってきます。例えば、5,000万円の物件を購入するとして、9割の融資が受けられた場合は、自己資金500万円と付随する経費を準備することになります。もし、融資額が少なく、自己資金も十分に用意できないという場合は、物件の購入自体を見送らないといけないということもありえます。

収益還元法は、銀行側が物件の評価額を計算する際に使われます。したがって、収益還元法を知っておけば、物件価格の何割まで融資を受けられそうか、ある程度予想をすることもできるでしょう。

納得いく購入につながる

自分自身でも収益還元法の計算ができるようになれば、実際の評価額により近い物件を見つけやすくなります。

不動産は、売値を自由に決められます。そのため、不動産会社の資料だけを見て購入を決めると、価値が低い物件を高値で購入してしまい、損をする可能性があります。収益還元法の計算ができれば、より確実に利益を生み出す物件を見つけて、投資を行うことができるでしょう。

購入から売却までの戦略を立てやすくなる

収益還元法の計算方法は、購入時の評価額だけでなく、売却する際の売却想定価格の算出にも役立ちます。不動産は購入時の単価が極端に低い場合や、再開発の予定がある場合などを除けば、基本的に売却時は購入時より価値が下がってしまうものです。そのため、不動産投資で利益を得るには、購入時から売却するまで、その不動産がどの程度の価値を持つか全体的に把握しておくことが大切です。収益還元法を知ることにより、売却までの戦略も立てやすくなるでしょう。

相続税の計算や対策に役立つ

収益還元法を知ることは、相続税の対策にも効果的です。相続税の申告において、不動産は本来、時価によって評価することになっています。不動産の時価は、主に収益還元法によって査定されます。

収益還元法の計算方法を知っておけば、物件を相続する際の税金を見極めやすくなるでしょう。

リスク分析やキャッシュフロー計算書作成にも役立つ

不動産投資では、対象の不動産が適正な価格であるか、収益性が高く割安な不動産を見つけることができるかなど、多角的に判断することが重要です。

収益還元法は、対象となる不動産が今後生み出す収益を予想して、現在の価値を知る方法です。物件の価値が今後どうなるか、予想を算出できれば、投資におけるリスク分析や、キャッシュフロー計算書作成時にも参考となるでしょう。

多角的な視野を持ち、投資に活かせる

収益還元法には、後ほど説明するように2種類の計算方法があります。それぞれ違う角度から不動産を計算する方法なので、購入する際は、対象となる不動産が適正な価格であるか、将来的に見て購入する価値があるかどうかを判断するのに役立つでしょう。

収益還元法を学ぶことにより、さまざまな角度から物件を見ることができるようになるでしょう。

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収益還元法には、2種類の計算方法があります。一つが直接還元法、もう一つがDCF法です。

どちらも対象となる不動産が将来生み出す収益を基に、不動産価格を算出する方法です。それぞれ特徴がありますので、計算例も踏まえながら解説します。

一定期間(通常は1年間を想定します)の純収益を還元利回り(不動産が生み出す収益から不動産価格を計算するときに使用する利回り)で割ることで不動産価格を求める方法です。「純収益」は、通常家賃から経費を差し引いた額を指します。

家賃5万円、5部屋のアパート(満室)、経費50万円、還元利回り5%と想定した1棟アパートの価格を求める場合は、以下のようになります。

5万円×5部屋×12ヶ月=300万円(1年間の家賃)

300万円-50万円=250万円(純収益)

250万円÷0.05(5%)=5,000万円(不動産の価格)

ここで重要になってくるのが、家賃と経費の額、そして還元利回りです。

家賃に関しては、1年間満室という保証はなく、また家賃の額も築年数がたてばたつほど、下がる傾向にあります。

契約途中に家賃の減額交渉が発生することも考えられます。また、フリーレントの形式をとっていたり、空室期間がどれほどあったりするかどうかで、収益の総額も変わってくるでしょう。

次に経費についてです。通常、不動産には固定資産税や管理料、不動産会社に支払う仲介手数料、修繕費などさまざまな経費がかかります。想定しているよりも多くかかることもありますから、注意が必要です。

最後に還元利回りについてです。通常、500万円の投資をして年間に50万円の利益を得られたとしたら、その投資の利回りは10%ということになります。

しかし、還元利回りについては決まった計算式があるわけではありません。似たような条件(立地、部屋数、築年数など)の不動産を基準に決めることが多いのです。

想定される家賃収入や必要な経費を細かく計算することで、より適正な不動産の価格を導き出すことができるといえるでしょう。

DCF法とは、ディスカウントキャッシュフロー法の略です。将来、対象不動産によって得られる収益と、その対象不動産の予想売却額を現在の価格に割り引き、その合計額を不動産価格とする手法です。

「現在の価格に割り引く」というのは、以下のような考え方です。

例えば今、目の前に100万円あれば、これを投資すると将来的に100万円以上の価値になる可能性があります。しかし、将来の100万円以上の価値になるのはあくまでも「予定」ですので、不確実なものです。

そのため、今手にできる100万円のほうが、将来もらえる「予定」の100万円よりも価値が高く、将来もらえる「予定」の100万円は、その価値の差だけ割り引いて考える必要があります。これが「現在の価格に割り引く」という考え方です。

DCF法の計算方法を年ごとに表すと、次のようになります。

(1年目)年間の収益÷(1+割引率)の1乗=1年目の収益価値

(2年目)年間の収益÷(1+割引率)の2乗=2年目の収益価値

(3年目)年間の収益÷(1+割引率)の3乗=3年目の収益価値

(4年目)年間の収益÷(1+割引率)の4乗=4年目の収益価値

(5年目)年間の収益÷(1+割引率)の5乗=5年目の収益価値

5年後の不動産価格は、上記の合計額に、売却価格÷(1+割引率)の5乗を足すことで求めることができます。

次に具体的な例を基にDCF法の計算方法について解説していきます。

家賃5万円、5部屋のアパート(満室)、投資期間5年間、割引率5%、売却予定価格4,000万円を想定した1棟のアパートの価格を、DCF法を使って求める場合は、以下のようになります。

5万円×5部屋×12ヶ月=300万円(1年間の家賃)

1年目 300万円÷(1+0.05)=約285万円

2年目 300万円÷(1+0.05)の2乗=約272万円

3年目 300万円÷(1+0.05)の3乗=約259万円

4年目 300万円÷(1+0.05)の4乗=約246万円

5年目 300万円÷(1+0.05)の5乗=約235万円

1年目から5年目の収益の合計額=約1,297万円

売却予定額の現在価値=4,000万円(売却予定額)÷(1+0.05)の5乗=約3,134万円

不動産価格は収益総額から求められるため、約1,297万円+約3,134万円=約4,431万円となります。

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上記の二つのほかにも、積算法という算出方法があります。積算法とは、土地と建物の担保価値を合計して、不動産価格を算出する方法です。

土地に関しては、「路線価」や「公示価格」を基に算出し、建物は「再調達価格」を基に評価価格を算出し、それぞれ足すことにより不動産全体の積算価格とする計算方法です。この「路線価」「公示価格」「再調達価格」について解説します。

路線価とは

路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことを指します。毎年国税庁が公表し、固定資産税などを決めるときに使われます。

公示価格とは

毎年1月1日時点の土地の正常価格(通常の売買をする際の時価)を複数の不動産鑑定士が鑑定し、土地鑑定委員会で審査して決定した価格です。公共事業のための用地買収価格はこの価格を基準に決める必要があります。

これら「路線価」「公示価格」を基にした積算法の土地の評価額については、不動産の住所さえわかれば、国税庁ホームページ(財産評価基準書)から調べることができます。土地の積算評価=1平方メートルあたりの評価額×宅地面積で算出され、1平方メートルあたりの評価額は国税庁ホームページに記載されています。

再調達価格とは

再調達価格は、同等の建物を建築する場合にどのくらいの費用が必要になるかを評価する算出方法です。各構造(鉄筋コンクリート<RC>等)の基準価格×延べ床面積×(残存年数÷法定耐用年数)によって建物の価格を求めます。

不動産価格を算出する方法として、今まで紹介した方法のほかにも「原価法」があります。

原価法とは、査定の対象となる不動産の再調達価格をもとに、現在の状態を考慮して対象不動産の価格を計算する方法です。原価法の計算方法は、下記のとおりです。

対象不動産価格=再調達原価×減価修正

再調整原価は、坪単価20万円、150坪の土地に軽量鉄骨の一戸建てを建築する場合、下記のとおり算出できます。

再調達原価=坪単価20万円×150坪=3,000万円

また、減価修正は建物の築年数や設備の老朽化、周辺の環境や土地価格の変化などを考慮し、再調達原価から差し引いたものを算出することです。減価額は、耐用年数に基づいて算出する方法と、対象となる不動産の築年数や設備、周辺環境など実態調査を行って算出する方法があります。一般的に築年数が耐用年数を超えた場合の価値は、0円とみなされます。耐用年数は、国税庁のホームページで確認することができます。例えば、3mmを超え、4mm以下の軽量鉄骨の場合、耐用年数は27年です。

この減価修正の計算方法は、下記のとおりです。

減価修正=残存年数(耐用年数-築年数)÷耐用年数

前述の軽量鉄骨一戸建ての家が築17年だった場合の不動産価格は、下記のとおり算出できます。

  • 減価修正=(27年-17年)÷27年=約0.37
  • 対象不動産価格=再調達価格3,000万円×減価修正0.37=1,110万円

上記のほかにも、「取引事例比較法」という不動産価格の算出方法があります。

取引事例比較法は、対象となる不動産の周辺における過去の査定額を参考に、必要に応じて修正を行いながら査定する方法です。査定を行うにあたって参考にするのは、販売価格ではなく、実際に売買された価格です。

査定の手順は、まず過去の取引事例から比較対象となる成約事例を探します。そこから個別の情報を考慮し、修正を加えて査定額を割り出します。

取引事例比較法で行われる修正は、主に四つあります。

1.事情補正

対象に特別な事情がある場合に加える補正です。例えば、生活困窮による任意の売却や、急ぎで売却を希望したケース、競売や業者による買取の場合などは、通常より安く売却していることがほとんどです。この場合、通常価格で売却するためには、補正できる範囲は補正し、査定額では高く評価する必要があります。ただし、そもそも特別な事情がある成約事例は、最初から比較対象としてみなさないことも多くあります。

2.時点修正

不動産の価格相場には波があり、特に土地を含む不動産では、取引価格が変動しやすくなっています。そこで、数年前の成約事例と比較し、今の不動産相場が上昇または下降している場合は、その分を評価対象として価格の修正を行います。

3.地域要因による修正

比較対象は対象となる物件となるべく近い成約事例を用います。しかし、同じ市区町村内でも地域や場所によって価値は異なるため、下記のようなポイントを考慮して修正を行います。

  • エリア、学区、治安や交通量
  • 最寄駅からの距離
  • 商業施設の充実度
  • 騒音や異臭

4.個別要因による修正

不動産は、それぞれ広さや形状などが異なります。そこで、下記のポイントを個別要因として考慮し、総合的に判断しながら修正を行います。

  • 建物や部屋の広さ、土地の広さや形
  • 間取りや方角
  • 築年数やリフォーム状況
  • 日当たりや眺望
  • 共用部設備
  • 接道の有無や地盤の強さ

取引事例比較法は、直接不動産を見なくても査定できるため、簡易査定として大まかな相場の把握に使われることがあります。また、すべての不動産に用いることができる査定方法で、多くのケースで使用されます。特に、個別要因によって査定額の変動が少ない、マンションの査定などに適しています。

ただし、取引事例比較法は、周辺に参考となる取引がなければ、算定するのが難しいです。ほかの評価方法と組み合わせて検討することが大切です。

積算法は、国が認めた路線価や公示価格を利用して不動産価格を算出しますが、必ず適正な価格が算出されるとは限りません。前述した収益還元法(直接還元法およびDCF法)と比較して不動産価格を決める必要があるでしょう。

まず、直接還元法もDCF法もどちらも収益還元法ですので、将来に生み出す収益に着眼しています。積算法は土地と建物の担保価値の合計ですので、着眼点が異なります。

また、直接還元法は一定期間の純収益を還元利回りで割ることで収益還元価格を算出します。DCF法は、将来の資産価値は現在の資産価値よりも低いと考えていますので、そこが大きな違いといえます。

原価法は、再調達価格をもとに計算することが、大きな特徴です。対象となる不動産を同じように新築した際にかかる費用から、現在の状況を考慮した分を差し引いて査定します。注意したいのは、査定額を算出するために割り出す減価修正は耐用年数によって変動することです。耐用年数の数字も国税庁によって決定されるため、時代とともに変動する可能性があるでしょう。例えば、木造住宅の法定耐用年数は22年とされていますが、22年以上住むことができるものもあるでしょう。また、原価法は取引事例比較法と異なり、実際に売買された金額を参考にするのではありません。あくまで周辺に売買されている取引がない場合に使用できる不動産の評価方法です。

一方、取引事例比較法は、実際に売買された価格をもとに計算する方法です。実際に売買された数字は参考になりますが、取引事例比較法の場合は周辺に取引事例がなければ、基本的に使えないことがあります。また、取引事例比較法の場合は、査定する不動産を問いませんが、過去の成約事例から評価する方法であるため、比較対象が見つかりやすいマンションで特に使われやすい方法といえます。

このように、収益に着眼するのか、担保価値に着眼して評価するのか、それぞれの計算方法の違いはあります。不動産価格を求める際には、適宜これらを組み合わせて考えていく必要があるでしょう。

不動産投資を始めるときには、その不動産の価格が適当であるかを考える必要がありますが、価格が適当かどうかのヒントとなる計算法がいくつかあります。不動産の価格を割り出す方法それぞれの違いを理解することで、より適正な不動産価格を導き出し、収益性の高い不動産を見つけられる可能性が高まります。自分で価格を算出し、少しでも割安な不動産に出合うことが、不動産投資を成功させるひとつの鍵と言えるでしょう。

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