デリバティブとは? 種類やメリット・デメリットを紹介

「デリバティブ」という言葉を聞いたことはありますか? 投資をしている人なら聞いたことがあるかもしれませんが、投資をしたことがない人には聞きなれない言葉かもしれません。デリバティブとはどのようなものなのか、種類やメリット・デメリットについて説明します。

まずは、デリバティブの概要や歴史、取引方法について見てみましょう。

デリバティブは英語で「derivative」と表現され、「金融派生商品」とも呼ばれます。分かりやすく言えば、現物から派生したものを意味します。現物とは、農作物や貴金属、株式、債券、通貨、エネルギーなどのことを指します。例えば、株式の場合は、日経平均株価から派生した「日経225先物」や「日経225オプション」がデリバティブ商品ということになります。

デリバティブを使った取引は、リスク回避の手段として開発されました。例えば、海外との貿易をする際に、為替の乱高下などのリスクを回避するために使われる取引は「デリバティブ取引」のひとつです。日本ではデリバティブの取引高は横ばいですが、世界の商品デリバティブ市場全体では 、取引される商品の種類が増えたことや、IT技術の発展に伴い取引の利便性が向上したこと、取引の国際化が進んでいることなどから、現在は取引が拡大しています。

デリバティブには、具体的に以下のような商品があります。

仕組預金

仕組預金とは、デリバティブを組み込むことで高い利息を実現した特約付きの定期預金のことを指します。

原則として中途解約できない、解約するとペナルティがあるといった特徴があります。具体的なペナルティの内容としては、「利息がつかない」といったことが挙げられますが、場合によっては「元本割れを起こす」こともある点に注意が必要です。

仕組債

仕組債とは、一般的な債券にオプションやスワップなどのデリバティブを組み込んだ債券のことです。代表的なものにEB債や株価指数連動(リンク)債があります。

オプションとはあらかじめ約束した価格で将来売買する権利のことです。また、スワップとは金利や通貨を交換する取引のことです。

不動産デリバティブ

不動産に関連したデリバティブです。

不動産投資をしたい人にとっては、実物の不動産を売買せずに利益の平準化を図ることができます。また、不動産を保有している場合には、「不動産価格の下落」や「空室による家賃収入の減少」といったリスクを抑えることができます。

そもそもデリバティブの仕組みは古くから存在しており、日本では江戸時代から大阪の米商人の間で取り入れられていました。米の取引をする際に、天候不良が続いたり災害があったりすると米の価格は乱高下してしまいます。そこで商人たちが価格を安定させたいと考え、あらかじめ米の売買価格を決めて取引を始めました。この取引はリスクの回避と投資の目的から発展し、「堂島米市場」として幕府からも公認されました。その後、明治時代に堂島米市場は「堂島米会所」として発展していきますが、この「堂島米会所」は世界初の組織化されたデリバティブの取引所として知られています。この米の取引は、現在のデリバティブ取引のひとつである先物取引に近いものです。

当初は、デリバティブの対象は、農作物などが中心でした。しかし、1970年代初頭に国際通貨が固定相場から変動相場へ移行してからは、為替や金利の変動リスクを回避するため金融商品にも拡大していきます。株式市場でも、投資家や証券会社は市場規模の拡大と同時に、株価の変動リスクの回避を求めるようになってきました。そうしたニーズから、デリバティブの対象は農作物から通貨や株式に拡大していったのです。

デリバティブは、どこで取引するかによって「取引所取引」と「相対取引」に分類されます。

取引所取引は、取引所が定めたルール内で取引を行います。もしものときに相手方の破綻による取引の不履行が起きないような保全策がとられています。また、多くの投資家が参加することで流動性が高まり、適正な値段で取引されると考えられているのです。

相対取引は、店頭取引(OTC取引)とも呼ばれ、取引の当事者間で売買する取引です。そのため、自由度の高い取引ができます。しかし、取引の相手が破綻した場合の損失をそのまま受けることや、個別の契約のため転売しにくく適正価格が分かりにくいといったデメリットもあります。この相対取引の商品には、以下のようなものがあります。

天候デリバティブ

天候に関連したデリバティブです。気温や風、降水量、日照時間等の気候変動により企業が被る収益減少や支出増大に対応する商品で、設定した期間中のそれらの推移に応じて金額が支払われます。

クレジットデリバティブ

社債や貸付債権の信用リスクに関連したデリバティブです。社債などを持っている投資家が、投資家同士で条件を決めて取引を行います。社債などが債務不履行になった場合に、元本や利息が保証されます。

地震デリバティブ

地震に関連したデリバティブです。契約期間内にあらかじめ決められた観測地点で一定の震度以上の地震が発生すると、補償金を受け取ることができます。

地震保険の場合、地震によって実損があることが条件となりますが、地震デリバティブにはそうした条件はありません。

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デリバティブには、大きく分類すると先物取引、オプション取引、スワップ取引の3種類があります。それぞれについて見てみましょう。

先物取引は、対象商品における将来の売買について、現時点で特定の価格で約束をする取引のことを指します。現時点で買う取引をする場合、将来に約束した価格で購入することになります。反対に、現時点で売る取引をする場合は、将来に約束した価格で売却することになります。

具体的には、有価証券を対象とした「有価証券先物取引」や、取引所に上場されている外国通貨を対象とした「通貨(為替)先物取引」、金やガソリン、とうもろこしなどを対象とした「商品先物取引」などがあります。

オプション取引には、コール・オプションとプット・オプションの2種類があります。

コール・オプションとは、対象商品において、あらかじめ決められた価格(権利行使価格)で商品を買うことができる権利のことです。プット・オプションとは、コール・オプションとは反対に、権利行使価格で商品を売ることができる権利のことです。

オプションの買い手は権利を取得する対価として、オプションの購入代金であるオプション料を売り手に支払います。買い手は権利を行使することによって、対象商品をその時の市場価格とは無関係に権利行使価格で売買できます。将来、買い手は自分の都合が良い場合だけ権利を行使でき、権利を行使しない場合は先に支払ったオプション料の分のみが発生します。

反対に、オプション取引の売り手はオプション料を受け取る対価として、買い手が権利を行使した場合、それに応じる義務を負います。買い手が期日までに権利を行使しない場合はオプション料を受け取ったまま義務を免れることができます。

先物取引においては、買い手は将来の期日が来たときに自分にとって不利な場合も決済しなければいけませんが、オプション取引では買い手は自分にとって有利なときだけ権利を行使できる点が魅力です。

具体的には、以下のようなオプション取引があります。

  • 通貨オプション:あらかじめ定められた期間(権利行使期間)において、あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で、ある通貨ペアを売買する権利(義務ではない)の取引のことです。
  • 債券オプション:通貨オプション取引と同様に、あらかじめ定められた期間において、あらかじめ定められた価格で、ある債券を売買する権利の取引です。
  • 株価指数オプション:あらかじめ定められた期間において、あらかじめ定められた価格で日経225などの株価指数を売買する権利の取引のことです。

スワップという言葉は、等しい価値のものを交換するという意味で使われます。スワップ取引とは、将来の金利や支払い義務などを交換する取引です。代表的なものとして、金利スワップ取引と通貨スワップ取引があります。

金利スワップ取引は、同じ種類の通貨で異なる種類の金利(固定金利や変動金利など)を取引の当事者間で交換する取引です。通貨スワップ取引は、種類の異なる通貨間の将来の金利と元本を交換する取引です。

そのほかにも、種類の異なる通貨間で金利部分のみ交換を行うクーポンスワップ、株価と金利など株式に関連したものとの交換を行うエクイティスワップ、商品価格と金利などを交換するコモディティスワップなどがあります。また、この三つを組み合わせた商品も開発されています。スワップ取引を原資産としオプション取引をするスワップション、債券先物の値動きを原資産としオプション取引をする債券先物オプションなどがその例です。

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続いて、デリバティブのメリット・デメリットを見ていきましょう。

デリバティブのメリットには、以下のようなものがあります。

相場変動リスクを回避できる

将来相場が変動するリスクを回避できる点は、デリバティブの魅力です。例えば、株式相場が下落した際に、先物を売ることで下落のリスクを回避できます。

レバレッジを効かせて少ない資金で多額の取引ができる

デリバティブ取引で必要となる資金は、先物であれば証拠金、オプションであればオプション料、スワップであれば金利のみで、元本のすべてを払う必要はありません。つまり、少ない資金で多額の取引ができます。こうした取引のことを、テコの原理を意味する「レバレッジ効果」と呼びます。

多様な商品の取引ができる

デリバティブ取引によって、さまざまな商品の取引をすることができるようになります。また、デリバティブの仕組みを用いることで既存金融商品についても先物、オプション、スワップを使った商品が開発される場合もあり、顧客のニーズに合わせて金融商品の種類は広がっていく可能性があります。

一方、デリバティブのデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

相場が急騰・急落することがある

デリバティブの取引が大幅に増えると、相場が急騰したり急落したりする要因になる可能性があります。

保証金を維持するために損失が増える場合がある

デリバティブ取引では、保証金を差し入れて株式や通貨などの取引を行います。デリバティブ取引を行うために、各証券会社の独自の基準で最低限必要な保証金の割合(最低保証金率)が決まっています。保有している株券などの価格が値下がりした際には、含み損(時価が購入時の価格を下回ること)が発生するため、保証金の評価も減り、「最低保証金率」を下回ることがあるので注意が必要です。

「最低保証金率」を下回った場合には、以下のようなことを行う必要があります。

  • 追加で保証金の差し入れる(追証)
  • 保有している株や為替の決済を行う

このような対応により、予想外の損失が出る場合もあるため注意が必要です。

取引が複雑化・高度化している

デリバティブ取引は現在、金融工学の発展と顧客のニーズの多様化に応じて、取引が複雑化・高度化しています。一般の投資家にとっては理解するのが難しい複雑な内容となっているため、正しく理解する前にデリバティブ取引を行うのは危険と言えるでしょう。

デリバティブは、値動きによるリスクを回避できたり、一般的な金融取引に比べて少ない資金で効果的に取引を行えたりするメリットがあります。しかし、その一方でリスクとそれに伴うデメリットがあることも認識することが重要です。

デリバティブを検討する際は、メリット・デメリットを理解し、自分の投資方針や資産状況に合うのか確認するようにしましょう。

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