憧れのアーリーリタイアを実現するために必要なこととは?

新聞などのメディアで「アーリーリタイア」という言葉を目にすることがあります。悠々自適なイメージを持つ人もいるでしょう。今回は、アーリーリタイアがどのようなものなのか、また、失敗例や実現するために必要なことについて解説します。

「アーリーリタイア」とは、直訳すると早期退職のことです。一般的には、定年を迎える60代ではなく、もっと若いうちに仕事を辞めることを意味します。アーリーリタイアをすると、「仕事をまったくせずに貯蓄と資産のみで生活する」ことになります。

類似する言葉に「セミリタイア」がありますが、アーリーリタイアとセミリタイアは何が違うのでしょうか。

セミリタイアという言葉は、1990年に芸能人の大橋巨泉氏が出演していたほとんどの番組を降板する際、記者会見で使ったことで知られるようになったといわれています。その会見のなかで、完全に芸能界・放送界と縁を切る「リタイア」ではないことを強調しました。

その後、「退職年齢よりも早く第一線からはリタイアし、悠々自適なライフスタイルを楽しみながら余裕のあるときに仕事もする」という意味の言葉として、セミリタイアは定着していきました。実際に、大橋巨泉氏はセミリタイアを宣言した後も、番組に出演したり、執筆活動をしたり、会社経営をしたりと仕事もしながら、悠々自適に海外滞在を楽しむ生活を送っています。

このように、セミリタイアは「ある程度資産を保有している状態で時間に余裕を持って働きながら生活する」というスタイルになりますので、アーリーリタイアとは「仕事をするかどうか」という点が異なります。

アーリーリタイアをするには、生活を送れるだけの資金が必要です。例えば、食費、水道光熱費、消耗品、税金や保険料(国民年金保険料、国民健康保険料)、家賃、自動車の維持費、自治会費などが生活に必要な資金です。さらに、必要な支出をしても生活できるだけの貯金があれば、アーリーリタイア後の生活に余裕が生まれやすいでしょう。

アーリーリタイア後に必要な資金の目安は、何歳でアーリーリタイアをするかによって大きく異なります。アーリーリタイアのために必要な資金がどれくらいになるか、計算してみましょう。

2018年の総務省の調査「家計調査年報(家計収支編)」によると、単身世帯の消費支出額は、月平均16万2,833円でした。

ただし、アーリーリタイアの必要資金を計算するうえで、最低限必要な金額の計算をしていても、万が一足りなくなった場合、生活していくことが困難になります。そこで、今回は毎月必要な支出額を20万円と仮定して、アーリーリタイアした年代ごとに必要資金を計算した例をご紹介します。

また、65歳以上の年金支給に関しては、最低金額の国民年金のみ(6万5,000円)をもらえるものとして計算し、寿命は85歳として計算します。

さらに、独身者の場合、65~85歳の間に必要な生活資金を月額15万円とし、この20年間については以下のように2,040万円かかると仮定します。

(15万円-6万5,000円)×12ヵ月×20年=2,040万円

【独身:30代の場合】

65歳まで必要な金額は、20万円×12ヵ月×35年=8,400万円です。85歳まで生きる場合は、これに2,040万円を足した1億440万円が必要と考えるとよいでしょう。

【独身:40代の場合】

65歳まで必要な金額は、20万円×12ヵ月×25年=6,000万円です。85歳まで生きる場合は、これに2,040万円を足した8,040万円が必要と考えるとよいでしょう。

【独身:50代の場合】

65歳まで必要な金額は、20万円×12ヵ月×15年=3,600万円です。85歳まで生きる場合は、これに2,040万円を足した5,640万円が必要と考えるとよいでしょう。

前出の調査によると、2人以上世帯の消費支出額は月平均287,315円でした。こちらも少し多めに考え、毎月必要な支出額を月30万円と仮定して計算します。

また、単身世帯と同様に、65歳以上の年金支給に関しては、最低金額の国民年金のみ(6万5,000円)をもらえるものとして計算し、寿命は85歳として計算します。

さらに、2人以上世帯の場合、65~85歳の間に必要な生活資金を月額25万円、20年間では以下のように2,880万円かかると仮定します。

25万円-(6万5,000円×2人)×12ヵ月×20年=2,880万円

【家族あり(2人以上):30代の場合】

65歳まで必要な金額は、30万円×12ヵ月×35年=1億2,600万円です。85歳まで生きる場合は、これに2,880万円を足した1億5,480万円が必要と考えるとよいでしょう。

【家族あり(2人以上):40代の場合】

65歳まで必要な金額は、30万円×12ヵ月×25年=9,000万円です。85歳まで生きる場合は、これに2,880万円を足した1億1,880万円が必要と考えるとよいでしょう。

【家族あり(2人以上):50代の場合】

65歳まで必要な金額は、30万円×12ヵ月×15年=5,400万円です。85歳まで生きる場合は、これに2,880万円を足した8,280万円が必要と考えるとよいでしょう。

778_01.jpg

アーリーリタイアを実現するために必要なことにはどんなものがあるのか、考えてみましょう。

どこまで本気でアーリーリタイアをしたいかを考える

会社に勤めていれば、仕事は大変かもしれませんが、収入を得て生活をすることができます。アーリーリタイアをすると、仕事を辞めることになるため、この収入がなくなってしまうため、基本的に貯金のみで生活することになります。

また、勤務時間であった時間は、アーリーリタイアをすると完全に自由な時間になります。自由になる時間が増えてやりたいことができるということは魅力的ですが、そのうち時間を持て余してしまうということもあるかもしれません。

このように、アーリーリタイアをすると使える収入や時間が変わります。自由な時間を悠々自適に過ごすためには、その後の人生の生きがいと、それを実現するための費用が必要になります。生活費に加えて、人生を有意義に過ごすための余裕資金を捻出できる資産はあるのか、いま一度考えを整理しておいたほうがよいでしょう。

また、アーリーリタイアをするとライフスタイルが大きく変わることになります。家族がいるのであれば、家族の理解を得ることも不可欠です。

アーリーリタイアの手段や計画を決める

自分の望みの実現や生きがいのためにアーリーリタイアを選択するのであれば、その手段や計画を決めていきましょう。家族がいる場合は、家族の理解を得るための説得材料も用意しなければなりません。

まずは収支計画を考える必要があります。「アーリーリタイア後に生活や趣味の費用がどれくらいかかるか」「これらの費用を現在の資産だけで捻出していくことができるかどうか」を、100歳までの時系列にして、キャッシュフロー表を作成してみましょう。

もし、現在の資産だけでは足りない場合は、アーリーリタイア前に足りない資金を得るためにどのような手段を取るのかを考える必要があります。また、アーリーリタイアにこだわらず、短時間の仕事をするセミリタイアも選択肢に入れてもよいでしょう。

投資などで資産を増やす方法を検討する

アーリーリタイアをするためには、継続的に収入を得る必要があります。不動産投資の家賃収入、株式投資の配当金などのように、定期的な収入が見込める金融商品は、アーリーリタイアに向いていると言えるでしょう。

しかし、今までに投資経験がない場合、ハイリスクな金融商品に大金を投じるのは危険です。まずは生活への影響が少ない少額の投資から徐々に始めていくとよいでしょう。

778_02.jpg

アーリーリタイアの計画を考えるうえでは、失敗例を知り、回避する対策を講じておくことも大切なことです。ここでは、アーリーリタイアのよくある失敗例をご紹介します。

収支計画を立てずに退職してしまう

資産があまりないという状態で無計画に会社を退職し、生活に困窮してしまうというケースです。このような場合、預貯金の切り崩しをしながら節約に努め、収入を得るために仕事を探す必要があります。

このような事態に陥ることを回避するため、アーリーリタイアの前に収支計画を立てておくことが重要です。

出費が増える

サラリーマンの場合、会社に守られている点があります。例えば健康診断、家賃補助、通信教育、社員食堂などの福利厚生が充実していたり、社会保険には国民健康保険にない傷病手当金も含まれていたりすることなどです。

また、サラリーマンで働いている間は、健康保険や厚生年金は社会保険として会社が半分を負担しています。しかし、アーリーリタイアをすると、それらに代わる国民健康保険料や国民年金保険料は、全額自己負担となります。サラリーマンとして働いていたときより、出費が増えることを想定し、上手に計画をしておかないと生活費が足りなくなってしまうかもしれません。

さらに、社会保険に加入している場合は、扶養に入っている家族の国民年金保険料を負担する必要がありません。しかし、国民年金は通常一人ずつ加入する必要があるため、アーリーリタイアをする時点で20歳以上の家族がいる場合は、その人数分、国民年金保険料がかかります。

アーリーリタイアをすると、こうした優遇がなくなってしまうことを念頭に置いておきましょう。

ローンが組めない

アーリーリタイアをすると、無職の状態になります。無職というと自由なイメージがありますが、銀行からの借入れが難しくなったり、ローンが組みにくくなったりするデメリットがあります。したがって、アーリーリタイア後に家や車などを購入する際は、現金一括で買うことが多くなることを意識する必要があります。

また、現金一括で住宅を購入する場合は、住宅ローンを組んだ際に税金面で優遇される「住宅ローン控除」は受けられないので注意しましょう。

収入がある場合は確定申告をしないといけない

サラリーマンの場合は、年末調整をすれば税金の申告が終わることが一般的です。しかし、アーリーリタイアをした場合、もし不動産所得のような収入があると、確定申告が必要です。もし、申告を忘れた場合は、延滞税や無申告加算税を支払う必要があります。

申告内容に間違いがあった場合、訂正申告や修正申告を行えば、不足分の税額と延滞税の支払いだけで済みます。

しかし、何年間も確定申告をせず、税務調査が入ってから修正申告をする場合は、不足している税額と延滞税のほかに、加算税が課されます。加算税には、過少申告加算税と重加算税があります。過少申告加算税は、本来の所得税、もしくは50万円に対し10%~15%加算されます。重加算税は、税務調査によって悪質だと判断された場合に、本来納めるべき税額に対し35%~40%が課されます。

もし、税務調査が入ったうえで修正申告をする場合、調査官の判断によっては最長7年間分の修正が必要となる場合もあります。確定申告をする際は、申告漏れや、申告内容に間違いがないように気をつけましょう。

虚無感や孤独を覚える

会社勤めをしていると、決まった時間に起きて生活を送るというリズムが当たり前にできていきます。仕事における人間関係は悩みの種にもなることもありますが、人付き合いがあるからこそ、身だしなみを整えるなど緊張感をもって生活を送ることができるとも言えます。

アーリーリタイアをすると、自由な時間は増えますが、周りの人が働いているなかで自身は働いていないということに罪悪感を覚えたり、何もすることがないために自分の存在意義が分からなくなるという虚無感に襲われたりすることもあります。また、同僚や上司、部下とのコミュニケーションの場がなくなることで、孤独感が強くなることもあるでしょう。その結果、メンタル面に良くない影響が出たり、うつ状態になったりする可能性もあります。

病気にかかると資金が大幅に減ってしまう

アーリーリタイア後、自分や家族が病気にかかってしまうケースも頭に入れておかなければなりません。想定していなかった医療費が急に必要となり、資産が大幅に減少してしまうことになれば、生活を見直す必要があります。

アーリーリタイアをして自分のやりたいことを実現している人もいるでしょう。しかし、アーリーリタイアに憧れを持っていても、すべての人がうまくいくとは限りません。アーリーリタイアを実現したいという場合は、目的や手段を前もって熟考し、計画的に準備を進めていきましょう。

関連記事