不動産所得における損益通算とは? 具体的な計算方法を基に解説

不動産投資をすると、収支が赤字になることもあれば黒字になることもあります。赤字になった場合は、「損益通算」をすることで、節税につながりやすくなります。この損益通算とは、どのようなものでしょうか。今回は、損益通算の概要や具体的な計算方法、注意点について解説します。

不動産投資における「損益通算」とは

不動産投資における損益通算とは、不動産投資をして赤字になった際に、給与所得や事業所得の黒字所得と、その赤字分が相殺できる制度をいいます。駐車場とアパート、貸家など複数の不動産がある場合は、最初にすべての不動産で得られる収入の合計から必要経費の合計を差し引いてから、不動産所得を計算することになります。

所得には利子所得、配当所得、一時所得、雑所得のようにさまざまな種類の所得がありますが、赤字を損益通算できる所得は、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つです。どんな種類の所得の赤字でも損益通算できるわけではないということに注意しましょう。

不動産所得の損益通算の計算方法

実際に不動産所得がある独身サラリーマンAさんの例を見ていきましょう。

Aさんの2018年の収支関係

  • 不動産所得:▲200万円
  • 給与所得:500万円
  • 収支:▲200万円+500万円=300万円

上記のように、給与所得だけであれば500万円ですが、不動産所得の赤字と相殺することで所得が減ることになります。次に、どれだけ節税になるかを計算してみましょう。

【不動産所得がない場合】

課税所得金額が331万円以上695万円以下であるため、所得税率は20%です。

  • 所得税:{500万円-38万円(基礎控除)}×20%(所得税率)-42万7,500円(税額控除)=49万6,500円
  • 住民税:{500万円-33万円(基礎控除)}×10%=46万7,000円
  • 所得税と住民税の合計:49万6,500円+46万7,000円=96万3,500円

【赤字の不動産所得があった場合】

課税所得金額が196万円以上330万円以下であるため、所得税率は10%です。

  • 所得税:{300万円-38万円(基礎控除)}×10%(所得税率)-9万7,500円(税額控除)=16万4,500円
  • 住民税:{300万円-33万円(基礎控除)}×10%=26万7,000円
  • 所得税と住民税の合計:16万4,500円+26万7,000円=43万1,500円

このようになり、不動産所得で赤字になると上記の場合、所得税と住民税を合わせて96万3,500円-43万1,500円=53万2,000円の節税となります。

不動産投資における損益通算の注意点

不動産投資をすれば損益通算ができるため、節税につながりやすくなります。しかし注意点がありますので、ここで押さえておきましょう。

損益通算の対象外

土地取得にかかる借入金の利息については、損益通算の対象にはなりません。例えば不動産投資を始める際、土地の購入のために銀行から借り入れをします。その際、通常利息が発生しますが、土地に関わる借入金の利息は損益通算の対象になりませんので、赤字が出ても他の所得と相殺できません。また、別荘のように、趣味、娯楽、保養などの目的で所有する不動産を貸し付けた場合の利益も、損益通算の対象になりません。不動産投資の計画を立てる際には、不動産を貸し付ける目的にも気を付けましょう。

青色申告の繰り越し

帳簿の記録に基づいて正確に所得金額や税額を計算して確定申告を行う「青色申告」の場合、特別控除は10万円と65万円の2種類があります。基本的に青色申告をすれば特別控除は10万円ですが、不動産投資において下記の要件を満たすと65万円の控除が認められます。

  • アパートであればおおむね10室以上、貸家であれば5棟以上のような事業と認められる規模である
  • 正規の簿記原則に従って複式簿記で帳簿を付けている
  • 損益計算と貸借対照表を確定申告書に添付している
  • 法定期限内に提出(個人の場合は原則2月16日から3月15日まで)

以上の要件を満たさない場合は、10万円の控除になります。

また青色申告は赤字を3年間繰り越すことができます。例えば、以下のように不動産所得がプラスの場合でも、不動産所得を抑えることができます。

  • 2017年の不動産所得=▲300万円
  • 2018年の不動産所得=+200万円-200万円(2017年の赤字部分)=0
  • 2019年の不動産所得=+150万円-100万円(2017年の赤字の残り)=50万円

青色申告をするには、手続きや手間が少しかかりますが、帳簿を作るのも、昨今は便利なソフトがたくさん出ていますし、控除のメリットがありますので、できるかぎり青色申告をするようにするとよいでしょう。

キャッシュフローの赤字

不動産投資をして赤字になれば他の所得と相殺でき節税になりますが、キャッシュフローがいつまでも赤字では、投資をする意味が薄れてしまいます。

不動産投資では減価償却を使って赤字にすることが、効率のよい節税手段のひとつです。いくら赤字が出ると節税になるとはいえ、キャッシュフローまで赤字にならないよう極力気を付けましょう。例えば次の例を見てください。

【良い例】

不動産収入500万円-経費600万円(減価償却費200万円含む)=▲100万円

上記の場合、経理上は赤字ですが、キャッシュが出ていかない減価償却費が200万円含まれていますので、実質は100万円の黒字です。しかし会計上は赤字ですから節税となります。

【悪い例】

不動産収入500万円-経費600万円(減価償却費50万円含む)=▲100万円

上記の場合は、減価償却費が50万円ですので、実際にお金が出ていくのは50万円です。たしかに会計上赤字ですが、キャッシュフローも不動産収入500万円-経費550万円(減価償却を除いた金額)=▲50万円の赤字となっています。このような状況にならないように計画を立てることが大切です。

また、節税に意識がいきすぎて余分な経費を発生させないようにすることが大切です。例えば、減価償却をしたいがために不必要な設備投資をするのはよくありません。しっかりと計画を立て、費用対効果を考えたうえでのことならばよいのですが、赤字にすることを目的とした効果の期待できない設備投資は本末転倒です。不動産投資においては節税も大切ですが、最終的に利益を出すことが目的です。最低限の設備投資は必要ですが、過剰にならないようにしましょう。

ふるさと納税

最近はやりのふるさと納税ですが、ふるさと納税は所得税の計算において使われる所得控除のひとつである「寄附金控除」として扱われます。しかし、寄附金控除は黒字のときに大きな効果を発揮するものですので、状況によっては効果の少ない節税になる可能性もあります。例えば、給料と不動産所得を得ている人がふるさと納税をした場合、所得税の計算は下記のようになります。

【計算例:不動産所得が黒字の場合】

給与所得が500万円、不動産所得が200万円あり、所得控除が100万円と仮定した場合の所得税は、以下のとおりです。

課税所得金額が331万円以上695万円以下であるため、所得税率は20%です。

  • 500万円(給与所得)+200万円(不動産所得)-100万円(所得控除)=600万円(課税総所得金額)
  • 600万円(課税総所得金額)×20%(所得税率)-42万7,500円(税額控除)=77万2,500円(所得税)

【計算例:不動産所得が赤字の場合】

給与所得が500万円、不動産所得が▲300万円あり、所得控除が100万円と仮定した場合の所得税は、以下のとおりです。

課税所得金額が95万円以下であるため、所得税率は5%です。

  • 500万円(給与所得)-300万円(不動産所得)-100万円(所得控除)=100万円(課税総所得金額)
  • 100万円(課税総所得金額)×5%(所得税率)-0円(税額控除)=5万円(所得税)

不動産所得で大きな赤字が出て他の所得と合算することでゼロかマイナスになると、ふるさと納税での節税効果が薄れるか、もしくはなくなります。

ふるさと納税はあくまでも所得が黒字で税金が出た際により効果を発揮するものですから、不動産所得が赤字になる場合は必要以上にふるさと納税をしないよう気を付けましょう。

まとめ

不動産投資で赤字が出れば、損益通算をすることで節税につながることがあります。しかし、方法を間違えると単純にキャッシュフローの赤字となり、投資をしても手元に残る現金が思った以上に少なくなる可能性もあります。不動産投資を始める際は、綿密に計画を立て、慎重にスタートしましょう。

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